ハリーは杖つえに手をかけた。しかし、遅かった。――犬は大きくジャンプし、前足でハリーの胸を打った。ハリーはのけ反って倒れた。犬の毛が渦巻うずまく中で、ハリーは熱い息を感じ、数センチもの長い牙きばが並んでいるのを見た――。
しかし、勢い余って、犬はハリーから転ころがり落ちた。肋ろっ骨こつが折おれたかのように感じ、くらくらしながら、ハリーは立ち上がろうとした。新たな攻こう撃げきをかけようと、犬が急きゅう旋せん回かいして唸うなっているのが聞こえる。
ロンは立っていた。犬がまた三人に跳とびかかってきた時、ロンはハリーを横に押しやった。犬の両りょう顎あごがハリーではなく、ロンの伸ばした腕うでをバクリと噛かんだ。ハリーは野や獣じゅうにつかみかかり、むんずと毛を握った。だが犬はまるでボロ人形でもくわえるように、やすやすとロンを引きずっていった。
突とつ然ぜん、どこからともなく、何かがハリーの横っ面つらを張はり、ハリーはまたしても倒れてしまった。ハーマイオニーが痛みで悲鳴ひめいをあげ、倒れる音が聞こえた。ハリーは目に流れ込む血を瞬まばたきで払いのけて、杖をまさぐった――。
「ルーモス! 光よ!」ハリーは小声で唱となえた。
杖つえ灯あかりに照らし出されたのは、太い木の幹みきだった。スキャバーズを追って、「暴あばれ柳やなぎ」の樹下じゅかに入り込こんでいた。まるで強風に煽あおられるかのように枝を軋きしませ、「暴れ柳」は二人をそれ以上近づけまいと、前に後ろに叩たたきつけている。
そして、そこに、その木の根元ねもとに、あの犬がいた。根元に大きく開いた隙間すきまに、ロンを頭から引きずり込もうとしている――ロンは激はげしく抵てい抗こうしていたが、頭が、そして胴がズルズルと見えなくなりつつあった――。
「ロン!」ハリーは大声を出し、あとを追おうとしたが、太い枝が空を切って殺人パンチを飛ばし、ハリーはまた後ずさりせざるをえなかった。
“荧光闪烁!”他低声说。
“罗恩!”哈利大叫,想跟进去,但一根大树枝死命打下来,哈利被迫再度后退。