もうロンの片足しか見えなくなった。それ以上地中に引き込まれまいと、ロンは足をくの字に曲げて根元に引っかけ、食い止めていた。やがて、バシッとまるで銃じゅう声せいのような恐ろしい音が闇やみをつんざいた。ロンの足が折れたのだ。次の瞬しゅん間かん、ロンの足が見えなくなった。
「ハリー――助けを呼ばなくちゃ――」
ハーマイオニーが叫さけんだ。血を流している。「柳」がハーマイオニーの肩を切っていた。
「ダメだ! あいつはロンを食ってしまうほど大きいんだ。そんな時間はない――」
「誰か助けを呼ばないと、絶ぜっ対たいあそこには入れないわ――」
大枝がまたしても二人に殴なぐりかかった。小枝が握にぎり拳こぶしのように固く結ばれている。
「あの犬が入れるなら、僕ぼくたちにもできるはずだ」
ハリーはあちらこちらを跳とび回り、息を切らしながら、凶きょう暴ぼうな大枝のブローをかいくぐる道をなんとかして見つけようとしていた。しかし、ブローの届かない距離きょりから一歩も根元に近づくことはできなかった。
「ああ、誰か、助けて」
ハーマイオニーは、その場でおろおろ走り回りながら、狂ったようにつぶやき続けた。
「誰か、お願い……」
クルックシャンクスがさーっと前に出た。殴りかかる大枝の間を、まるで蛇へびのようにすり抜け、両前脚あしを木の節の一つに乗せた。
突とつ如じょ、「柳」はまるで大だい理り石せきになったように動きを止めた。木の葉一枚そよともしない。
「クルックシャンクス!」ハーマイオニーはわけがわからず小声でつぶやいた。
「この子、どうしてわかったのかしら――?」
ハーマイオニーはハリーの腕うでを痛いほどきつく握っていた。
「あの犬の友達なんだ」ハリーは厳きびしい顔で言った。
「僕、二匹が連れ立っているところを見たことがある。行こう――君も杖つえを出しておいて――」