「ロン――大だい丈じょう夫ぶ?」
「犬はどこ?」
「犬じゃない」ロンが呻うめいた。痛みで歯を食いしばっている。「ハリー、罠わなだ――」
「え――?」
「あいつが犬なんだ……あいつは『動物もどきアニメーガス』なんだ……」
ロンはハリーの肩越ごしに背後を見つめた。ハリーがくるりと振り向いた。影かげの中に立つ男が、二人の入ってきたドアをぴしゃりと閉めた。
汚よごれきった髪かみがもじゃもじゃと肘ひじまで垂たれている。暗い落ち窪くぼんだ眼窩がんかの奥で目がギラギラしているのが見えなければ、まるで死体が立っているといってもいい。血の気のない皮ひ膚ふが顔の骨にぴったりと貼はりつき、まるで髑髏どくろのようだ。ニヤリと笑うと黄色い歯がむき出しになった。シリウス・ブラックだ。
「エクスペリアームス! 武器よ去れ!」
ロンの杖つえを二人に向け、ブラックがしわがれた声で唱となえた。
ハリーとハーマイオニーの杖が二人の手から飛び出し、高々と宙を飛んでブラックの手に収まった。ブラックが一歩近づいた。その目はハリーをしっかり見み据すえている。
「君なら友を助けにくると思った」
かすれた声だった。声の使い方を長いこと忘れていたかのような響ひびきだった。
「君の父親もわたしのためにそうしたに違いない。君は勇ゆう敢かんだ。先生の助けを求めなかった。ありがたい……そのほうがずっと事ことは楽だ……」
“罗恩—— 你没事吧?”
“那条狗哪里去了?”
“不是狗。”罗恩呻吟道。由于疼痛,他牙关紧咬。“哈利,这是陷阱..”
“什么—— ?”
“他就是那狗..他是个阿尼马格斯..”
罗恩向哈利肩头看去。哈利飞快地转身。啪的一声响,阴影里的那个人关上了他们身后的门。
一团肮脏、纠结的头发一直垂到肘部,如果藏在又深又黑的眼眶里的眼睛不发光,他就可能是具尸体,蜡状的皮肤紧贴在脸上的骨架上,看上去活像骷髅头。他龇着黄牙咧嘴笑着,是小天狼星布莱克。
“除你武器!”他嘶哑着声音说,用罗恩的魔杖指着他们。哈利和赫敏的魔杖都脱手而去,高高地飞在空中,被布莱克接住了。然后他向前跨了一步。他盯着哈利。
“我想你们会来帮助朋友的。”他哑着嗓子说。他的声音听起来像是他好久没有说过话了。“你爸爸也会这样对待我的。你们真勇敢,没有去找老师。我感激..这样事情就容易得多..”