「だって……だって、もしピーター・ペティグリューが『動物もどきアニメーガス』なら、みんなそのことを知っているはずです。マクゴナガル先生の授業で『動物もどき』の勉強をしました。その宿題で、私、『動物もどき』を全部調べたんです。――魔ま法ほう省しょうが動物に変身できる魔法使いや魔女を記録していて、何に変身するかとか、その特とく徴ちょうなどを書いた登とう録ろく簿ぼがあります。――私、登録簿で、マクゴナガル先生が載のっているのを見つけました。それに、今世紀にはたった七人しか『動物もどき』がいないんです。ペティグリューの名前はリストに載っていませんでした――」
ハーマイオニーはこんなに真しん剣けんに宿題に取り組んでいたのだ、とハリーは内心舌を巻いたが、驚いている間もなく、ルーピン先生が笑いだした。
「またしても正せい解かいだ、ハーマイオニー。でも、魔ま法ほう省しょうは、未み登とう録ろくの『動物もどきアニメーガス』が三匹、ホグワーツを徘はい徊かいしていたことを知らなかったのだ」
「その話をみんなに聞かせるつもりなら、リーマス、さっさとすませてくれ」
必死ひっしにもがくスキャバーズの動きを、じっと監視かんしし続けながら、ブラックが唸うなった。
「わたしは十二年も待った。もうそう長くは待てない」
「わかった……だが、シリウス、君にも助けてもらわないと。私はそもそもの始まりのことしか知らない……」
ルーピンの言葉が途と切ぎれた。背後で大きく軋きしむ音がしたのだ。ベッドルームのドアが独ひとりでに開いた。五人がいっせいにドアを見つめた。そしてルーピンが足あし早ばやにドアのほうに進み、階段の踊おどり場を見た。
「誰もいない……」
「ここは呪のろわれてるんだ!」ロンが言った。
「そうではない」不審ふしんそうにドアに目を向けたままで、ルーピンが言った。
「『叫さけびの屋敷やしき』はけっして呪われてはいなかった……村人がかつて聞いたという叫びや吠ほえ声は、私の出した声だ」
ルーピンは目にかかる白はく髪はつの混じりはじめた髪かみをかき上げ、一いっ瞬しゅん思いにふけり、それから話しだした。
「話はすべてそこから始まる。――私が人じん狼ろうになったことから。私が噛かまれたりしなければ、こんなことはいっさい起こらなかっただろう……そして、私があんなにも向こう見ずでなかったなら……」
ルーピンはまじめに、疲れた様子で話した。ロンが口を挟はさもうとしたが、ハーマイオニーが「シーッ」と言った。ハーマイオニーは真しん剣けんにルーピンを見つめていた。