「そのころの私の変身ぶりといったら――それは恐ろしいものだった。狼おおかみ人にん間げんになるのはとても苦痛に満ちたことだ。噛かむべき対象の人間から引き離はなされ、代わりに私は自分を噛み、引っ掻かいた。村人はその騒ぎや叫さけびを聞いて、とてつもなく荒々しい霊れいの声だと思った。ダンブルドアはむしろ噂うわさを煽あおった……いまでも、もうこの屋敷が静かになって何年も経たつのに、村人は近づこうともしない……」
「しかし、変身することだけを除けば、人生であんなに幸せだった時期はない。生まれて初めて友人ができた。三人のすばらしい友が。シリウス・ブラック……ピーター・ペティグリュー……それから、言うまでもなく、ハリー、君のお父さん――ジェームズ・ポッターだ」
「さて、三人の友人が、私が月に一度姿を消すことに気づかないはずはない。私はいろいろ言いい訳わけを考えた。母親が病気で、見み舞まいに家に帰らなければならなかったとか……。私の正体を知ったら、とたんに私を見捨てるのではないかと、それが怖こわかったんだ。しかし、三人は、ハーマイオニー、君と同じように、本当のことを悟さとってしまった……」
「それでも三人は私を見捨てはしなかった。それどころか私のために、あることをしてくれた。おかげで変身は辛つらいものではなくなったばかりでなく、生しょう涯がいで最高の時になった。三人とも『動物もどきアニメーガス』になってくれたんだ」
「僕ぼくの父さんも?」ハリーは驚いて聞いた。
「ああ、そうだとも」ルーピンが答えた。「どうやればなれるのか、三人はほぼ三年の時間を費やしてやっとやり方がわかった。君のお父さんもシリウスも学校一の賢かしこい学生だった。それが幸いした。なにしろ、『動物もどき』変身はまかり間違うと、とんでもないことになる。魔ま法ほう省しょうがこの種の変身をしようとする者を、厳きびしく見み張はっているのもそのせいなんだ。ピーターだけはジェームズやシリウスにさんざん手伝ってもらわなければならなかった。五年生になって、やっと、三人はやり遂とげた。それぞれが、意のままに特定の動物に変身できるようになった」