「ムーディが」ハリーが言った。まだまったく信じられない気持だった。「いったいどうしてムーディが?」
「こやつはアラスター・ムーディではない」ダンブルドアが静かに言った。「ハリー、きみはアラスター・ムーディに会ったことがない。本物のムーディなら、今夜のようなことが起こったあとで、わしの目の届くところからきみを連れ去るはずがないのじゃ。こやつがきみを連れていった瞬間しゅんかん、わしにはわかった――そして、跡あとを追ったのじゃ」
ダンブルドアはぐったりしたムーディの上に屈かがみ込み、ローブの中に手を入れた。そしてムーディの携けい帯たい用よう酒さか瓶びんと鍵かぎ束たばを取り出し、マクゴナガル先生とスネイプのほうを振り向いた。
「セブルス、君の持っている『真実薬ベリタセラム』の中でいちばん強力なのを持ってきてくれぬか。それから厨房ちゅうぼうに行き、ウィンキーという屋や敷しき妖よう精せいを連れてくるよう。ミネルバ、ハグリッドの小屋に行ってくださらんか。大きな黒い犬がかぼちゃ畑にいるはずじゃ。犬をわしの部屋に連れていき、まもなくわしも行くからとその犬に伝え、それからここに戻ってくるのじゃ」
スネイプもマクゴナガルも奇妙な指示があるものだと思ったかもしれない。しかし、二人ともそんな素そ振ぶりは見せなかった。二人はすぐさま踵きびすを返し、部屋から出ていった。ダンブルドアは七つの錠前じょうまえがついたトランクのところへ歩いていき、一本目の鍵を錠前に差し込んでトランクを開けた。中には呪じゅ文もんの本がぎっしり詰まっていた。ダンブルドアはトランクを閉め、二本目の鍵を二つ目の錠前に差し込み、再びトランクを開けた。呪文の本は消えていた。ここには壊こわれた「かくれん防止器スニーコスコープ」や、羊よう皮ひ紙し、羽根ペン、銀色の透とう明めいマントらしいものが入っていた。ダンブルドアが三つ目、四つ目、五つ目、六つ目と、次々に鍵を合わせトランクを開くのを、ハリーは驚いて見つめていた。開くたびに、トランクの中身が違っていた。七番目の鍵が錠前に差し込まれ、蓋ふたがパッと開いた。ハリーは驚いて叫さけび声を漏もらした。