「あなたは、物事が見えなくなっている」いまやダンブルドアは声を荒あららげていた。手で触ふれられそうなほど強烈きょうれつなパワーのオーラが体から発散し、その目は再びメラメラと燃えている。
「自分の役職に恋れん々れんとしているからじゃ、コーネリウス! あなたはいつでも、いわゆる純じゅん血けつをあまりにも大切に考えてきた。大事なのはどう生まれついたかではなく、どう育ったかなのだということを認めることができなかった! あなたの連れてきた吸魂鬼が、たったいま、純血の家いえ柄がらの中でも旧きゅう家かとされる家か系けいの、最後の生存者を破は壊かいした――しかも、その男は、その人生でいったい何をしようとしたか! いまここで、はっきり言おう――わしの言う措置を取るのじゃ。そうすれば、大だい臣じん職しょくに留まろうが、去ろうが、あなたは歴代の魔法大臣の中で、もっとも勇ゆう敢かんで偉大な大臣として名を残すであろう。もし、行動しなければ――歴史はあなたを、営々と再建してきた世界をヴォルデモートが破は壊かいするのを、ただ傍ぼう観かんしただけの男として記憶するじゃろう!」
「正気の沙さ汰たではない」またしても退きながらファッジが小声で言った。「狂っている……」
そして、沈ちん黙もくが流れた。マダム・ポンフリーがハリーのベッドの足元で、口を手で覆おおい、凍こおりついたように突っ立っていた。ウィーズリーおばさんはハリーに覆いかぶさるようにして、ハリーの肩を手で押さえ、立ち上がらないようにしていた。ビル、ロン、ハーマイオニーはファッジを睨にらみつけていた。
「目をつぶろうという決意がそれほど固いなら、コーネリウス」ダンブルドアが言った。「袂たもとを分かつときが来た。あなたはあなたの考えどおりにするがよい。そして、わしは――わしの考えどおりに行動する」
ダンブルドアの声には威い嚇かくの響ひびきは微み塵じんもなかった。淡々とした言葉だった。しかし、ファッジは、ダンブルドアが杖つえを持って迫せまってきたかのように、毛を逆立てた。