「ドローレス・アンブリッジのクラスで態度たいどが悪いと、あなたにとっては、寮りょうの減点げんてんや罰則だけではすみませんよ」
「どういうこと――」
「ポッター、常識を働かせなさい」マクゴナガル先生は、急にいつもの口調に戻ってバシッと言った。「あの人がどこから来ているか、わかっているでしょう。誰に報告しているのかもわかるはずです」
終業ベルが鳴った。上の階からも、周り中からも何百人という生徒が移動する象の大群のような音が聞こえてきた。
「手紙には、今週、毎晩まいばんあなたに罰則を科すと書いてあります。明日からです」マクゴナガル先生がアンブリッジの手紙をもう一度見下ろしながら言った。
「今週毎晩」ハリーは驚きょう愕がくして繰くり返した。「でも、先生、先生なら――」
「いいえ、できません」マクゴナガル先生はにべもなく言った。
「でも――」
「あの人はあなたの先生ですから、あなたに罰則を科す権利があります。最初の罰則は明日の夕方五時です。あの先生の部屋に行きなさい。いいですか。ドローレス・アンブリッジのそばでは、言動に気をつけることです」
「でも、僕はほんとのことを言った」ハリーは激怒げきどした。「ヴォルデモートは戻ってきた。先生だってご存知ぞんじですし、ダンブルドア校長先生も知ってる――」
「ポッター 何ということを」マクゴナガル先生は怒ったようにメガネを掛かけ直したハリーがヴォルデモートと言ったときに、先生はぎくりとたじろいだのだ。「これが嘘うそか真まことかの問題だとお思いですか これは、あなたが低てい姿し勢せいを保って、癇かん癪しゃくを抑おさえておけるかどうかの問題です」
マクゴナガル先生は鼻息も荒く、唇くちびるをきっと結んで立ち上がった。ハリーも立ち上がった。
「ビスケットをもう一つお取りなさい」先生は缶かんをハリーのほうに突き出して、イライラしながら言った。
「いりません」ハリーが冷たく言った。
「いいからお取りなさい」先生がびしりと言った。
ハリーは一つ取った。
「いただきます」ハリーは気が進まなかった。
「学期始めにドローレス・アンブリッジが何と言ったか、ポッター、聞かなかったのですか」
「聞きました」ハリーが答えた。「えーと……たしか……進歩は禁じられるとか……でも、その意味は……魔法省がホグワーツに干かん渉しょうしようとしている……」
マクゴナガル先生は一いっ瞬しゅん探るようにハリーを見てフフンと鼻を鳴らし、机の向こうから出て部屋のドアを開けた。
「まあ、とにかくあなたが、ハーマイオニー・グレンジャーの言うことを聞いてくれてよかったです」先生は、ハリーに部屋を出るようにと外を指差しながら言った。