競技場へと急ぐ下り坂は、足下あしもとの凍こおりついた芝生しばふが踏ふみしだかれ、パリパリと音を立てた。風はなく、空一面が真珠しんじゅのような白さだった。これなら、太陽光が直接目に当たらず、視界しかいはいいはずだ。道々みちみち、こういう励はげみになりそうなことをロンに話してみたが、ロンが聞いているかどうか定かではなかった。
二人が更こう衣い室しつに入ると、アンジェリーナはもう着き替がえをすませ、他の選手に話をしていた。ハリーとロンはユニフォームを着たロンは前後逆に着ようとして数分間じたばたしていたので、哀あわれに思ったのか、アリシアがロンを手伝いに行った。それから座って、アンジェリーナの激げき励れい演えん説ぜつを聴きいた。その間、城から溢あふれ出した人の群れが競技場へと押し寄せ、外のガヤガヤ声が、確実に大きくなってきた。
「オーケー、たったいま、スリザリンの最終的なラインナップがわかった」
アンジェリーナが羊よう皮ひ紙しを見ながら言った。
「去年ビーターだったデリックとボールはいなくなった。しかし、モンタギューのやつ、その後釜あとがまに飛び方がうまい選手じゃなく、いつものゴリラ族を持ってきた。クラッブとゴイルとかいうやつらだ。私はこの二人をよく知らないけど――」
「僕たち、知ってるよ」ハリーとロンが同時に言った。
「まあね、この二人、箒ほうきの前後もわからないほどの頭じゃないかな」アンジェリーナが羊皮紙をポケットにしまいながら言った。「もっとも、デリックとボールだって、道どう路ろ標ひょう識しきなしでどうやって競技場にたどり着けるのか、いつも不思議に思ってたんだけどね」
「クラッブとゴイルもそのタイプだ」ハリーが請うけ合った。
何百という足音が観かん客きゃく席せきを登っていく音が聞こえた。歌か詞しまでは聞き取れなかったが、ハリーには何人かが歌っている声も聞こえた。ハリーはドキドキしはじめたが、ロンの舞まい上がり方に比べればなんでもないことが明らかだ。ロンは胃袋のあたりを押さえ、まっすぐ目の前の宙を見つめていた。歯を食いしばり、顔は鉛なまり色いろだ。
「時間だ」
アンジェリーナが腕時計を見て、感情を抑おさえた声で言った。
「さあ、みんな……がんばろう」
選手が一斉いっせいに立ち上がり、箒ほうきを肩に、一列行進で、更こう衣い室しつから輝かがやかしい空の下に出て行った。ワーッという歓声かんせいが選手を迎むかえた。応援おうえんと口笛くちぶえに呑のまれてはいたが、その中にまだ歌声が混じっているのをハリーは聞いた。