「ハリー、何ぼやぼやしてるのよ」ケイティを追って上昇し、ハリーのそばを飛びながら、アンジェリーナが絶ぜっ叫きょうした。
「動いて、動いて」
気がつくと、ハリーは、もう一分以上空中に静止して、スニッチがどこにあるかなど考えもせずに、試合の運びに気を取られていた。たいへんだ、とハリーは急きゅう降こう下かし、再びピッチを回りはじめた。あたりに目を凝こらし、いまや競技場を揺ゆるがすほどの大コーラスを無む視ししようと努めた。
♪ウィーズリーこそ我が王者 ウィーズリーこそ我が王者……
どこを見てもスニッチの影すらない。マルフォイもハリーと同じく、まだ回り続けている。ピッチの周囲を互いに反対方向に回りながら、中間地点ですれ違ったとき、ハリーはマルフォイが高らかに歌っているのを聞いた。
♪ウィーズリーの生まれは豚ぶた小ご屋やだ……
「――そして、またまたワリントンです」リーが大だい音おん声じょうで言った。「ピュシーにパス。ピュシーがスピネットを抜きます。さあ、いまだ、アンジェリーナ、君ならやれる――やれなかったか――しかし、フレッド・ウィーズリーからのナイス・ブラッジャー、おっと、ジョージ・ウィーズリーか。ええい、どっちでもいいや。とにかくどちらかです。そしてワリントン、クアッフルを落としました。そしてケイティ・ベル――あ――これも落としました――さて、クアッフルはモンタギューが手にしました。スリザリンのキャプテン、モンタギューがクアッフルを取り、ピッチをゴールに向かいます。行け、行くんだ、グリフィンドール、やつをブロックしろ」
ハリーはスリザリンのゴールポストの裏うらに回り、ピッチの端はたをブンブン飛び、ロンのいる側がわの端で何が起こっているか絶対に見ないように我慢がまんした。スリザリンのキーパーの脇わきを急速で通過つうかしたとき、キーパーのブレッチリーが観かん衆しゅうと一いっ緒しょに歌っているのが聞こえた。
♪ウィーズリーは守れない……
「――さあ、モンタギューがアリシアをかわしました。そしてゴールにまっしぐら。止めるんだ ロン」
結果は見なくてもわかった。グリフィンドール側から沈痛ちんつうな呻うめき声が聞こえ、同時にスリザリン側から新たな歓声かんせいと拍はく手しゅが湧わいた。下を見ると、パグ犬顔のパンジー・パーキンソンが、観かん客きゃく席せきの最前列でピッチに背を向け、スリザリンのサポーターの喚わめくような歌声を指し揮きしていた。
♪だから歌うぞ、スリザリン ウィーズリーこそ我が王者おうじゃ……
だが、二〇対〇なら平気だ。グリフィンドールが追い上げるか、スニッチをつかむか、時間はまだある。二、三回ゴールを決めれば、いつものペースでグリフィンドールのリードだ。ハリーは自分を納得なっとくさせながら、何かキラッと光ったものを追って他の選手の間を縫ぬい、すばしっこく飛んだ。光ったのは、結局モンタギューの腕うで時ど計けいだった。