マクゴナガル先生の部屋のドアに着くか着かないうちに、先生が後ろから廊下ろうかを闊歩かっぽしてくるのが見えた。恐ろしく怒った顔で、大股おおまたで二人に近づきながら、首に巻いていたグリフィンドールのスカーフを、震ふるえる手で引きちぎるように剥はぎ取った。
「中へ」先生は怒り狂ってドアを指差した。
ハリーとジョージが中に入った。先生は足音も高く机の向こう側に行き、怒りに震ふるえながらスカーフを床に叩たたきつけ、二人と向き合った。
「さて」先生が口を開いた。「人前であんな恥曝はじさらしな行為こういは、見たことがありません。一人に二人がかりで 申し開きできますか」
「マルフォイが挑ちょう発はつしたんです」ハリーが突っ張った。
「挑発」
マクゴナガル先生は怒ど鳴なりながら机を拳こぶしでドンと叩いた。その拍ひょう子しにタータン柄がらの缶かんが机から滑すべり落ち、蓋ふたがパックリ開あいて、生しょう姜がビスケットが床に散らばった。
「あの子は負けたばかりだったでしょう。違いますか 当然、挑ちょう発はつしたかったでしょうよ しかしいったい何を言ったというんです 二人がかりを正当化するような――」
「僕の両親を侮ぶ辱じょくしました」ジョージが唸うなり声ごえを上げた。「ハリーのお母さんもです」
「しかし、フーチ先生にその場を仕切っていただかずに、あなたたち二人は、マグルの決闘けっとうショーをやって見せようと決めたわけですか」マクゴナガル先生の大声が響ひびき渡った。「自分たちがやったことの意味がわかって――」
「ェヘン、ェヘン」
ハリーもジョージもさっと振り返った。ドローレス・アンブリッジが戸口に立っていた。巻きつけている緑色のツイードのマントが、その姿をますます巨大なガマガエルそっくりに見せていた。ぞっとするような、胸の悪くなるような、不吉ふきつな笑みを浮かべている。このにっこり笑いこそ、ハリーには迫せまりくる悲劇ひげきを連想れんそうさせるものになっていた。
「マクゴナガル先生、お手伝いしてよろしいかしら」アンブリッジ先生が、毒をたっぷり含ふくんだ独特どくとくの甘い声で言った。
マクゴナガル先生の顔に血が上のぼった。
「手伝いを」先生が締しめつけられたような声で繰くり返した。「どういう意味ですか 手伝いを」
アンブリッジ先生が部屋に入ってきた。胸の悪くなるような笑みを続けている。
「あらまあ、先生にもう少し権威けんいをつけてさし上げたら、お喜びになるかと思いましたのよ」
マクゴナガル先生の鼻の穴から火花が散っても不ふ思し議ぎはない、とハリーは思った。