「何か誤解ごかいなさっているようですわ」
マクゴナガル先生はアンブリッジに背を向けた。
「さあ、二人とも、よく聞くのです。マルフォイがどんな挑ちょう発はつをしようと、そんなことはどうでもよろしい。たとえ、あなた方の家族全員を侮ぶ辱じょくしようとも、関係ありません。二人の行動は言ごん語ご道どう断だんです。それぞれ一週間の罰則ばっそくを命じます。ポッター、そんな目で見てもだめです。あなたは、それに値することをしたのです そして、あなた方が二度とこのような――」
「ェヘン、ェヘン」
マクゴナガル先生が「我に忍耐にんたいを与えよ」と祈いのるかのように目を閉じ、再びアンブリッジ先生のほうに顔を向けた。
「何か」
「わたくし、この二人は罰則ばっそく以上のものに値すると思いますわ」アンブリッジのにっこりがますます広がった。
マクゴナガル先生がパッと目を開けた。
「残念ではございますが」笑みを返そうと努力した結果、マクゴナガル先生の口元が不自然に引き攣つった。
「この二人は私わたくしの寮りょう生せいですから、ドローレス、私わたくしがどう思うかが重要なのです」
「さて、実は、ミネルバ」アンブリッジ先生がニタニタ笑った。「わたくしがどう思うかがまさに重要だということが、あなたにもおわかりになると思いますわ。えー、どこだったかしら コーネリウスが先ほど送ってきて……つまり」アンブリッジ先生はハンドバッグをゴソゴソ探しながら小さく声を上げて作り笑いした。「大臣が先ほど送ってきたのよ……ああ、これ、これ……」
アンブリッジは羊よう皮ひ紙しを一枚引っ張り出し、広げて、読み上げる前にことさら念入ねんいりに咳払せきばらいした。
「ェヘン、ェヘン……『教きょう育いく令れい第二十五号』」
「まさか、またですか」マクゴナガル先生が絶ぜっ叫きょうした。
「ええ、そうよ」アンブリッジはまだにっこりしている。「実は、ミネルバ、あなたのおかげで、わたくしは教育令を追加ついかすることが必要だと悟さとりましたのよ……憶おぼえているかしら。わたくしがグリフィンドールのクィディッチ・チームの再さい編へん成せい許きょ可かを渋しぶっていたとき、あなたがわたくしの決定を覆くつがえしたわね あなたはダンブルドアにこの件を持ち込み、ダンブルドアがチームの活動を許すようにと主張しました。さて、それはわたくしとしては承しょう服ふくできませんでしたわ。早速さっそく、大臣に連れん絡らくしましたら、大臣はわたくしとまったく同意見で、高こう等とう尋じん問もん官かんは生徒の特権とっけんを剥奪はくだつする権利を持つべきだ、さもなくば彼女は――わたくしのことですが――ただの教師より低い権限けんげんしか持たないことになる とまあ。そこで、いまとなってみればわかるでしょうが、ミネルバ、グリフィンドールの再編成を阻そ止ししようとしたわたくしがどんなに正しかったか。恐ろしい癇かん癪しゃく持ちだこと……とにかく、教育令を読み上げるところでしたわね……ェヘン、ェヘン……『高等尋問官は、ここに、ホグワーツの生徒に関するすべての処罰しょばつ、制裁せいさい、特権の剥奪に最高の権限けんげんを持ち、他の教きょう職しょく員いんが命じた処罰、制裁、特権の剥奪を変更へんこうする権限を持つものとする。署名しょめい、コーネリウス・ファッジ、魔法大臣、マーリン勲くん章しょう勲くん一いっ等とう、以下省しょう略りゃく』」
アンブリッジは羊よう皮ひ紙しを丸め直し、ハンドバッグに戻した。相変わらずにっこりだ。