「ハリー、見てのとおり」
ダンブルドアは、クリーチャーの「しない、しない、しない」と喚わめき続けるしわがれ声に消されないよう大きな声で言った。
「クリーチャーは、きみの所有物になるのに多少抵抗ていこうを見せておる」
「どうでもいいんです」身をよじって地じ団だん駄だを踏ふむしもべ妖よう精せいに、嫌悪けんおの眼差しを向けながら、ハリーは同じ言葉を繰くり返した。
「僕、いりません」
「しない、しない、しない、しない――」
「クリーチャーがベラトリックス・レストレンジの所有に移るほうがよいのか? クリーチャーがこの一年、不ふ死し鳥ちょうの騎き士し団だん本部で暮らしていたことを考えてもかね?」
「しない、しない、しない、しない――」
ハリーはダンブルドアを見つめた。クリーチャーがベラトリックス・レストレンジと暮らすのを許してはならないとわかってはいたが、所有するなどとは、シリウスを裏切うらぎった生き物に責任を持つなどとは、考えるだけで厭いとわしかった。
「命令してみるのじゃ」ダンブルドアが言った。
「きみの所有に移っておるのなら、クリーチャーはきみに従わねばならぬ。さもなくば、この者を正当な女主人から遠ざけておくよう、ほかの何らかの策さくを講こうぜねばなるまい」
「しない、しない、しない、しないぞ!」
クリーチャーの声が高くなって叫さけび声になった。ハリーはほかに何も思いつかないまま、ただ「クリーチャー、黙だまれ!」と言った。
一いっ瞬しゅん、クリーチャーは窒息ちっそくするかのように見えた。喉のどを押さえて、死に物狂いで口をパクパクさせ、両りょう眼がんが飛び出していた。数秒間必死で息を呑のみ込んでいたが、やがてクリーチャーはうつ伏ぶせにカーペットに身を投げ出し(ペチュニアおばさんがヒーッと泣いた)、両手両足で床を叩たたいて、ass="title">