「ホラス、きみはまだわしほどの歳ではない」ダンブルドアが言った。
「まあ、君自身もそろそろ引退を考えるべきだろう」
スラグホーンはぶっきらぼうに言った。淡あわいスグリ色の目は、すでにダンブルドアの傷ついた手を捕とらえていた。
「昔のような反はん射しゃ神しん経けいではないらしいな」
「まさにそのとおりじゃ」
ダンブルドアは落ち着いてそう言いながら、袖そでを振るようにして黒く焼け焦こげた指の先を顕あらわにした。一目見て、ハリーは首の後ろがゾクッとした。
「たしかにわしは昔より遅くなった。しかしまた一方……」
ダンブルドアは肩をすくめ、歳としの功こうはあるものだというふうに、両手を広げた。すると、傷ついていない左手に、以前には見たことがない指輪ゆびわがはめられているのにハリーは気づいた。金きん細ざい工くと思われる、かなり不器用に作られた大ぶりの指輪で、まん中に亀裂きれつの入った黒いどっしりした石が嵌はめ込んである。スラグホーンもしばらく指輪に目を止めたが、わずかに顔をしかめて、禿はげ上がった額ひたいに一いっ瞬しゅん皺しわが寄るのを、ハリーは見た。
「ところで、ホラス、侵しん入にゅう者しゃ避よけのこれだけの予よ防ぼう線せんは……死し喰くい人びとのためかね? それともわしのためかね?」ダンブルドアが聞いた。
「わたしみたいな哀あわれなよれよれの老いぼれに、死喰い人が何の用がある?」
スラグホーンが問い質ただした。
「連中は、きみの多大なる才能を、恐きょう喝かつ、拷問ごうもん、殺人に振り向けさせたいと欲ほっするのではないかのう」ダンブルドアが答えた。
「連中がまだ勧誘かんゆうしにきておらんというのは、本当かね?」
スラグホーンは一瞬ダンブルドアを邪悪じゃあくな目つきで見ながら、呟つぶやいた。
「やつらにそういう機会を与えなかった。一年間、居場所を替かえ続けていたんだ。同じ場所に、一週間以上とどまったためしがない。マグルの家を転々とした。――この家の主は休きゅう暇かでカナリア諸島でね。とても居い心ごこ地ちがよかったから去るのは残念だ。やり方を一度飲み込めば至し極ごく簡単だよ。マグルが『かくれん防ぼう止し器き』代わりに使っているちゃちな防犯ブザーに、単たん純じゅんな『凍とう結けつ呪じゅ文もん』をかけること、ピアノを運び込むとき近所の者に絶対見つからないようにすること、これだけでいい」
“你的年龄还没我大呢,霍拉斯。”邓布利多说。