「あの人たちの言ってることが聞こえればいいのに!」ハーマイオニーが言った。
「聞こえるさ!」ロンが興こう奮ふんした。「待ってて――コンニャロ――」
ロンはまだ箱をいくつか抱え込んだままだったが、いちばん大きな箱をいじり回しているうちに、ほかの箱をいくつか落としてしまった。
「『伸のび耳』だ。どうだ!」
「すごいわ!」ハーマイオニーが言った。
ロンは薄うす橙だいだい色いろの長い紐ひもを取り出し、ドアの下に差し込もうとしていた。
「ああ、ドアに『邪魔じゃまよけ呪じゅ文もん』がかかってないといいけど――」
「かかってない!」ロンが大喜びで言った。「聞けよ!」
三人は頭を寄せ合って、紐の端はしにじっと耳を傾けた。まるでラジオをつけたようにはっきりと大きな音で、マルフォイの声が聞こえた。
「……直し方を知っているのか?」
「かもしれません」
ボージンの声には、あまり関わりたくない雰ふん囲い気きがあった。
「拝見はいけんいたしませんと何とも。店のほうにお持ちいただけませんか?」
「できない」マルフォイが言った。
「動かすわけにはいかない。どうやるのかを教えてほしいだけだ」
ボージンが神しん経けい質しつに唇くちびるを舐なめるのが、ハリーの目に入った。
「さあ、拝見しませんと、なにしろ大変難むずかしい仕事でして、もしかしたら不可能かと。何もお約束はできないしだいで」
「そうかな?」マルフォイが言った。
その言い方だけで、ハリーにはマルフォイがせせら笑っているのがわかった。
「もしかしたら、これで、もう少し自信が持てるようになるだろう」
マルフォイがボージンに近寄ったので、キャビネット棚だなに隠かくされて姿が見えなくなった。ハリー、ロン、�
第6章 ドラコ・マルフォイの回り道(19)
「あの人たちの言ってることが聞こえればいいのに!」ハーマイオニーが言った。
「聞こえるさ!」ロンが興こう奮ふんした。「待ってて――コンニャロ――」
ロンはまだ箱をいくつか抱え込んだままだったが、いちばん大きな箱をいじり回しているうちに、ほかの箱をいくつか落としてしまった。
「『伸のび耳』だ。どうだ!」
「すごいわ!」ハーマイオニーが言った。
ロンは薄うす橙だいだい色いろの長い紐ひもを取り出し、ドアの下に差し込もうとしていた。
「ああ、ドアに『邪魔じゃまよけ呪じゅ文もん』がかかってないといいけど――」
「かかってない!」ロンが大喜びで言った。「聞けよ!」
三人は頭を寄せ合って、紐の端はしにじっと耳を傾けた。まるでラジオをつけたようにはっきりと大きな音で、マルフォイの声が聞こえた。
「……直し方を知っているのか?」
「かもしれません」
ボージンの声には、あまり関わりたくない雰ふん囲い気きがあった。
「拝見はいけんいたしませんと何とも。店のほうにお持ちいただけませんか?」
「できない」マルフォイが言った。
「動かすわけにはいかない。どうやるのかを教えてほしいだけだ」
ボージンが神しん経けい質しつに唇くちびるを舐なめるのが、ハリーの目に入った。
「さあ、拝見しませんと、なにしろ大変難むずかしい仕事でして、もしかしたら不可能かと。何もお約束はできないしだいで」
「そうかな?」マルフォイが言った。
その言い方だけで、ハリーにはマルフォイがせせら笑っているのがわかった。
「もしかしたら、これで、もう少し自信が持てるようになるだろう」
マルフォイがボージンに近寄ったので、キャビネット棚だなに隠かくされて姿が見えなくなった。ハリー、ロン、ハーマイオニーは蟹歩かにあるきしてマルフォイの姿をとらえようとしたが、見えたのはボージンの恐きょう怖ふの表情だけだった。