「ハリー?」ハーマイオニーが心配そうに言った。「どうかした?」
「傷きず痕あとがまた痛むんじゃないだろな?」ロンが不安そうに聞いた。
「あいつが死喰い人だ」ハリーがゆっくりと言った。
「父親に代わって、あいつが死喰い人なんだ!」
しーんとなった。そしてロンが、弾はじけるように笑い出した。
「マルフォイが? 十六歳だぜ、ハリー!『例れいのあの人』が、マルフォイなんかを入れると思うか?」
「とてもありえないことだわ、ハリー」
ハーマイオニーが抑おさえた口調で言った。
「どうしてそんなことが――?」
「マダム・マルキンの店。マダムがあいつの袖そでをまくろうとしたら、腕には触ふれなかったのに、あいつ、叫さけんで腕をぐいっと引っ込めた。左の腕だった。闇やみの印しるしがつけられていたんだ」
ロンとハーマイオニーは顔を見合わせた。
「さあ……」ロンは、まったくそうは思えないという調子だった。
「ハリー、マルフォイは、あの店から出たかっただけだと思うわ」ハーマイオニーが言った。
「僕たちには見えなかったけど、あいつはボージンに、何かを見せた」ハリーは頑固がんこに言い張った。「ボージンがまともに怖こわがる何かだ。『印』だったんだ。間違いない――ボージンに、誰だれを相手にしているのかを見せつけたんだ。ボージンがどんなにあいつと真剣に接していたか、君たちも見たはずだ!」
ロンとハーマイオニーがまた顔を見合わせた。
「はっきりわからないわ、ハリー……」
「そうだよ。僕はやっぱり、『例のあの人』がマルフォイを入れるなんて思えないな……」
苛立いらだちながらも、自分の考えは絶対間違いないと確信して、ハリーは汚れたクィディッチのユニフォームをひと山ひっつかみ、部屋を出た。ウィーズリーおばさんが、ここ何日も、洗濯物や荷造りをぎりぎりまで延のばさないようにと、みんなを急せかしていたのだ。階段の踊り場で、洗濯したての服を山ほど抱えて自分の部屋に帰る途中のジニーに出くわした。