「エクスパルソ 爆破ばくは」死喰い人が大声で唱となえると、ハリーの前のテーブルが爆発し、その衝撃しょうげきでハリーは壁に打ちつけられた。杖が手を離はなれ、『マント』が滑すべり落ちるのを感じた。
「ペトリフィカス トタルス 石になれ」見えないところからハーマイオニーが叫んだ。死し喰くい人びとは石像のように固まり、割れたカップやコーヒー、テーブルの破片はへんなどの上にバリバリと音を立てて前のめりに倒れた。ベンチの下から這はい出したハーマイオニーは、ぶるぶる震ふるえながら、髪かみの毛についた灰皿の破片を振ふり落とした。
「デ――ディフィンド、裂さけよ」ハーマイオニーは杖つえをロンに向けて唱となえた。とたんにロンは、痛そうな叫さけび声を上げた。呪じゅ文もんはロンのジーンズの膝ひざを切り裂き、深い切り傷を残していた。「ああぁっ、ロン、ごめんなさい。手が震えちゃって ディフィンド」
縄なわが切れて落ちた。ロンは、感覚を取り戻そうと両腕を振りながら立ち上がった。ハリーは杖を拾い、破片を乗り越えてベンチに大の字になって倒れている大おお柄がらなブロンドの死喰い人に近づいた。
「こっちのやつは見破みやぶれたはずなのに。ダンブルドアが死んだ夜、その場にいたやつだ」そう言いながら、ハリーは床に倒れている色黒の死喰い人を、足でひっくり返した。男の目が素早くハリー、ロン、ハーマイオニーを順に見た。
「そいつはドロホフだ」ロンが言った。「昔、お尋たずね者のポスターにあったのを覚えてる。大きいほうは、たしかソーフィン・ロウルだ」
「名前なんかどうでもいいわ」ハーマイオニーが、ややヒステリー気味に言った。「どうして私たちを見つけたのかしら 私たち、どうしたらいいの」
ハーマイオニーがあわてふためいていることで、ハリーはかえって頭がはっきりした。
「入口に鍵かぎを掛かけて」ハリーはハーマイオニーに言った。「それから、ロン、明かりを消してくれ」
カチリと鍵が掛かり、ロンが「灯ひ消けしライター」でカフェを暗くした。その間にハリーは、金かな縛しばりになっているドロホフを見下ろしながら、素早く考えを巡らした。ついさっきハーマイオニーを冷やかした男たちの、別の女性に呼びかける声が、どこか遠くから聞こえてきた。
「こいつら、どうする」暗がりでロンがハリーに囁ささやいた。それから一段と低い声で言った。「殺すか こいつら、僕たちを殺すぜ。たったいま、殺やられるとこだったしな」
ハーマイオニーは身震みぶるいして、一歩下がった。ハリーは首を振った。