ハリーは父親を見つけて胸が躍おどった。くしゃくしゃな黒い髪かみは、ハリーと同じに後ろがピンピン立っているし、ハリーと同じにメガネを掛かけている。隣となりはシリウスで、無む頓とん着ちゃくなのにハンサムだ。少し高こう慢まんちきな顔は、シリウスが生前ハリーに見せたどの顔よりも若く、幸福そうだった。シリウスの右に立っているのはペティグリューで、頭一つ以上背が低く小太りで、色の薄うすい目をしている。みんなの憧あこがれの反はん逆児ぎゃくじであるジェームズとシリウスがいる、最高にかっこいいグループの仲間に入れてもらえたうれしさで、顔を輝かがやかせている。ジェームズの左側にルーピンがいる。そのころにして、すでにややみすぼらしい。しかし、ペティグリューと同様、自分が好かれていることや仲間にしてもらえたことに驚き、喜んでいる……いや、そんなふうに見えるのは、ハリーがそのころの事情を知っているからにすぎないのだろうか ハリーは写真を壁から剥はがそうとした。これは結局、ハリーの物だ――シリウスはハリーにすべてを遺のこしたのだから――しかし写真はびくともしない。シリウスは、両親が自分の部屋の内ない装そうを変えるのを、あくまで阻そ止しするつもりだったのだ。
ハリーは床を見回した。空が徐々じょじょに明るくなってきて、一条いちじょうの光が、絨毯じゅうたんに散らばっている羊よう皮ひ紙しや本や小物を照らした。シリウスの部屋も漁あさられているのが一目でわかる。もっとも部屋の中にある物は、全部とは言わないまでも、大部分は価値がないと判断されたらしい。何冊かの本は、乱暴に振ふられたらしく表紙が外はずれて、ページがバラバラになって散さん乱らんしていた。
ハリーはしゃがんで紙を何枚か拾い、内容を確かめた。一枚はバチルダ・バグショットの旧きゅう版はんの「魔ま法ほう史し」だったし、もう一枚はオートバイの修理しゅうりマニュアルの一部だとわかった。三枚目の手書きの紙は丸めてあったので、開いて伸ばした。