ハリーはミュリエルに聞いたことをすべて、ハーマイオニーに話した。ハリーが話し終えると、ハーマイオニーが言った。
「もちろん、なぜあなたがそんなに気にするかはわかるわ、ハリー――」
「――別に気にしちゃいない」ハリーは嘘うそをついた。「ただ知りたいだけだ。本当のことなのかどうか――」
「ハリー、意地悪な年寄りのミュリエルとかリータ・スキーターなんかから、本当のことが聞けるなんて、本気でそう思っているの どうして、あんな人たちが信用できる あなたはダンブルドアを知っているでしょう」
「知ってると思っていた」ハリーがつぶやいた。
「でも、リータがあなたについていろいろ書いた中に、どのくらい本当のことがあったか、あなたにはわかっているでしょう ドージの言うとおりよ。そんな連中に、ダンブルドアの想い出を汚けがされていいはずがないでしょう」
ハリーは顔を背そむけ、腹立たしい気持を悟さとられまいとした。またか。どちらを信じるか決めろ、ときた。ハリーは真実がほしかった。どうして誰もかれもがかたくなに、ハリーは真実を知るべきではないと言うのだろう。
「厨房ちゅうぼうに下りましょうか」しばらく黙だまったあとで、ハーマイオニーが言った。「何か朝食を探さない」
ハリーは同意したが、しぶしぶだった。ハーマイオニーに従ついて踊おどり場ばに出て、階段を下りる手前にある、もう一つの部屋の前を通り過ぎた。暗い中では気づかなかったが、ドアに小さな字で何か書いてあり、その下に、ペンキを深く引っかいたような跡あとがある。ハリーは、階段の上で立ち止まって文字を読んだ。パーシー・ウィーズリーが自分の部屋のドアに貼はりつけそうな感じの、気取った手書き文字できちんと書かれた小さな掲示けいじだった。
許可なき者の入室禁止
レギュラス・アークタルス・ブラック
ハリーの体にゆっくりと興こう奮ふんが広がった。しかしなぜなのか、すぐにはわからなかった。ハリーはもう一度掲示を読んだ。ハーマイオニーはすでに一つ下の階にいた。
「ハーマイオニー」ハリーは自分の声が落ち着いているのに驚いた。「ここまで戻ってきて」
「どうしたの」
「・・だ。僕、見つけたと思う」
驚いて息を呑のむ音が聞こえ、ハーマイオニーが階段を駆かけ戻ってきた。
「お母様の手紙に でも私は見なかったけど――」
ハリーは首を振ふってレギュラスの掲示けいじを指差した。ハーマイオニーはそれを読むと、ハリーの腕をぎゅっと握にぎった。あまりの強さに、ハリーはたじろいだ。