「ハリー――」
ハーマイオニーが、慰なぐさめるように手を伸ばした。しかしハリーはその手を振ふり払って、ハーマイオニーの作り出した火を見つめながら、暖炉だんろのほうに歩いた。一度この暖炉の中からルーピンと話をしたことがある。父親のことで確信が持てなくなったときだ。ルーピンは、ハリーを慰めてくれた。いまは、ルーピンが苦しんでいる。蒼そう白はくな顔が、ハリーの目の前をぐるぐると回っているような気がした。後こう悔かいがどっと押し寄せてきて、ハリーは気分が悪くなった。ロンもハーマイオニーも黙だまっている。しかし、二人が背後で見つめ合い、無言の話し合いをしているに違いないと感じた。
振り向くと、二人はあわてて顔を背そむけ合った。
「わかってるよ。ルーピンを腰抜け呼ばわりすべきじゃなかった」
「ああ、そうだとも」ロンが即座そくざに言った。
「だけどルーピンは、そういう行動を取った」
「それでもよ……」ハーマイオニーが言った。
「わかってる」ハリーが言った。「でも、それでルーピンがトンクスのところに戻るなら、言ったかいがあった。そうだろう」
ハリーの声には、そうであってほしいという切実さがにじんでいた。ハーマイオニーはわかってくれたようだったが、ロンは曖あい昧まいな表情だった。ハリーは足元を見つめて父親のことを考えた。ジェームズは、ハリーがルーピンに言ったことを肯定こうていしてくれるだろうか、それとも息子が旧友にあのような仕打ちをしたことを怒るだろうか
静かな厨房ちゅうぼうが、ついさっきの場面の衝撃しょうげきと、ロンとハーマイオニーの無言の非難ひなんでジンジン鳴っているような気がした。ルーピンが持ってきた「日にっ刊かん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」がテーブルに広げられたままで、一面のハリーの写真が天井をにらんでいた。ハリーは新聞に近づいて腰を掛かけ、脈みゃく絡らくもなく紙面をめくって読んでいるふりをした。まだルーピンとのやり取りのことで頭が一杯で、文字は頭に入らなかった。「予言者新聞」の向こう側では、ロンとハーマイオニーが、また無言の話し合いを始めたに違いない。ハリーは大きな音を立ててページをめくった。すると、ダンブルドアの名前が目に飛び込んできた。家族の写真がある。その意味が飲み込めるまで、一ひと呼吸こきゅうか二呼吸かかった。写真の下に説明がある。
「ダンブルドア一家 左からアルバス、生まれたばかりのアリアナを抱くパーシバル、ケンドラ、アバーフォース」