目が吸い寄せられ、ハリーは写真をじっくり見た。ダンブルドアの父親のパーシバルは美男子で、セピア色の古い写真にもかかわらず、目が悪戯いだずらっぽく輝かがやいている。赤ん坊のアリアナは、パン一本より少し長いくらいで、顔貌かおかたちもパンと同じようによくわからない。母親のケンドラは、漆しっ黒こくの髪かみを髷まげにして頭の高いところで留とめている。彫刻ちょうこくのような雰ふん囲い気きの顔だ。ハイネックの絹のガウンを着ていたが、その黒い瞳ひとみ、頬ほお骨ぼねの張った顔、まっすぐな鼻を見ていると、ハリーはアメリカ原住民の顔を思い起こした。アルバスとアバーフォースは、おそろいのレース衿えりのついた上着を着て、肩で切りそろえたまったく同じ髪かみ型がたをしていた。アルバスがいくつか年上には見えたが、それ以外は二人はとてもよく似ていた。これは、アルバスの鼻が折れる前で、メガネを掛かける前のことだからだ。
ごく普通の幸せな家族に見えた。写真は新聞から平和に笑いかけている。赤ん坊のアリアナが、お包くるみから出した腕を微かすかに振ふっている。ハリーは写真の上の見出しを読んだ。
リータ・スキーター著ちょ
アルバス・ダンブルドアの伝記〔近きん日じつ発はつ売ばい〕より抜ばっ粋すい 《独どく占せん掲けい載さい》
落ち込んだ気持がこれ以上悪くなることはないだろうと、ハリーは読みはじめた。
夫のパーシバルが逮捕たいほされ、アズカバンに収監しゅうかんされたことが広く報じられたあと、誇ほこり高く気位の高いケンドラ・ダンブルドアは、モールド‐オン‐ザ‐ウォルドに住むことが耐たえられなくなった。そこで、そこを引き払い、家族全員でゴドリックの谷に移ることを決めた。この村は、後日、ハリー・ポッターが「例のあの人」から不思議にも逃れた事件で有名になった。
モールド‐オン‐ザ‐ウォルド同様、ゴドリックの谷にも多くの魔法使いが住んでいたが、ケンドラの顔かお見み知しりは一人もおらず、それまで住んでいた村のように、夫の犯罪のことで好奇こうきの目を向けられることはないだろうと、ケンドラは考えた。新しい村では、近所の魔法使いたちの親切な申し出を繰くり返し断ることで、ケンドラはまもなく、ひっそりとした家族だけの暮しを確保した。
「私が手作りの大おお鍋なべケーキを持って、引っ越し祝いにいったときなんぞ、鼻先でドアを閉められたよ」バチルダ・バグショットはそう語った。「ここに越してきた最初の年は、二人の息子をときどき見かけるだけだった。その年の冬に、私が月明かりで鐘鳴り草プランジェンティンを摘つんでいなかったら、娘がいることは知らずじまいだったろうね。そのときに、ケンドラがアリアナを裏うら庭にわに連れ出しているのを見たんだよ。娘の手をしっかり握にぎって芝生を一周させ、また家の中に連れ戻した。いったいどう考えていいやら、わからなかったよ」