「ダンブルドアは――」
「ダンブルドアのことは言うな。これは僕の選んだことだ。ほかの誰でもない。僕は、あいつがどうしてグレゴロビッチを追っているのか、知りたいんだ」
「その人、誰」
「外国の杖つえ作つくりだ」ハリーが言った。「クラムの杖を作ったし、クラムが最高だと認めている」
「でもさ、君が言ってたけど」ロンが言った。「ヴォルデモートは、オリバンダーをどこかに閉じ込めている。杖作りを一人捕まえているのに、何のためにもう一人要いるんだ」
「クラムと同じ意見なのかもしれないな。グレゴロビッチのほうが、優秀ゆうしゅうだと思っているのかもしれない……それとも、あいつが僕を追跡ついせきしたときに僕の杖がしたことを、グレゴロビッチなら説明できると思っているのかもしれない。オリバンダーにはわからなかったから」
埃ほこりっぽいひびの入った鏡をちらりと見たハリーは、ロンとハーマイオニーが、背後で意味ありげな目つきで顔を見合わせる姿を見た。
「ハリー、杖が何かしたって、あなたは何度もそう言うけど」ハーマイオニーが言った。「でもそうさせたのはあなたよ 自分の力に責任を持つことを、なぜそう頑固がんこに拒こばむの」
「なぜかって言うなら、僕がやったんじゃないことが、わかっているからだ ヴォルデモートにもそれがわかっているんだよ、ハーマイオニー 二人とも、本当は何が起こったのかを知っているんだ」
二人はにらみ合った。ハーマイオニーを説せっ得とくしきれなかったことも、ハーマイオニーがいま反論をまとめている最中だということも、ハリーにはわかっていた。自分の杖に関するハリーの考え方と、ヴォルデモートの心を覗のぞくことをハリーが容よう認にんしているという事実、この二つに対する反論だ。しかし、ロンが口を挟はさんでくれて、ハリーはほっとした。
「やめろよ」ロンがハーマイオニーに言った。「ハリーが決めることだ。それに、明日魔ま法ほう省しょうに乗り込むなら、計画を検けん討とうするべきだと思わないか」
ハーマイオニーはしぶしぶ――と、あとの二人にはそれが読み取れた――議論するのをやめたが、折おりあらばすぐにまた攻こう撃げきを仕掛けてくるに違いないと、ハリーは思った。三人が地下の厨房ちゅうぼうに戻ると、クリーチャーはシチューと糖とう蜜みつタルトを給仕きゅうじした。