「さあ、それでは」ハーマイオニーが時計を見ながら言った。「予定の魔女は、あと五分ほどでここに来るはずだわ。私が『失しっ神しん呪じゅ文もん』をかけたら――」
「ハーマイオニー、わかってるったら」ロンが厳きびしい声で言った。「それに、その魔女がここに来る前に、扉とびらを開けておく手はずじゃなかったか」
ハーマイオニーが金切かなきり声ごえを上げた。
「忘れるところだった 下がって――」
ハーマイオニーは、すぐ脇わきにある、南なん京きん錠じょうの掛かかった落書きだらけの防ぼう火か扉とびらに杖つえを向けた。扉は大きな音を立ててパッと開いた。その裏うらに現れた暗い廊下ろうかは、これまでの慎重な偵てい察さつから、空き家になった劇場げきじょうに続いていることがわかっていた。ハーマイオニーは扉を手前に引き、元通り閉まっているように見せかけた。
「さて、こんどは」ハーマイオニーは、路地にいる二人に向き直った。「再び二人で『透明とうめいマント』を被かぶって――」
「――そして待つ」
ロンは言葉を引き取り、セキセイインコに目隠し覆おおいを掛かけるように、ハーマイオニーの頭からマントを被せながら、呆あきれたように目をぐるぐるさせてハリーを見た。
それから一分ほどして、ポンという小さな音とともに、小柄こがらな魔女職員がすぐ近くに「姿すがた現わし」した。太陽が雲間から顔を出したばかりで、ふわふわした白はく髪はつの魔女は突然の明るさに目を瞬しばたたいたが、予期せぬ暖かさを満まん喫きつする間もなく、ハーマイオニーの無言「失しっ神しん呪じゅ文もん」が胸に当たってひっくり返った。
「うまいぞ、ハーマイオニー」
ロンが、劇場げきじょうの扉とびらの横にあるゴミ容器の陰から現れて言った。ハリーは「透明マント」を脱ぬいだ。三人は小柄な魔女を、舞ぶ台たい裏うらに続く暗い廊下ろうかに運び込んだ。ハーマイオニーが魔女の髪かみの毛を数朔法は力なり Magic is Might(12)