「それから『死』は、道を開けて三人の兄弟が旅を続けられるようにしました。三人はいましがたの冒険の不思議さを話し合い、『死』の贈り物に感嘆かんたんしながら旅を続けました」
「やがて三人は別れて、それぞれの目的地に向かいました」
「一番上の兄は、一週間ほど旅をして、遠い村に着き、争っていた魔法使いを探し出しました。『ニワトコの杖つえ』が武器ですから、当然、その後に起こった決けっ闘とうに勝たないわけはありません。死んで床に倒れている敵を置き去りにして、一番上の兄は旅籠はたごに行き、そこで『死』そのものから奪うばった強力な杖について大声で話し、自分は無敵になったと自慢じまんしました」
「その晩のことです。一人の魔法使いが、ワインに酔よいつぶれて眠っている一番上の兄に忍び寄りました。その盗ぬす人びとは杖を奪うばい、ついでに一番上の兄の喉のどを掻かき切りました」
「そうして『死』は、一番上の兄を自分のものにしました」
「一方、二番目の兄は、ひとり暮らしをしていた自分の家に戻りました。そこですぐに死人を呼び戻す力のある石を取り出し、手の中で三度回しました。驚いたことに、そしてうれしいことに、若くして死んだ、その昔結婚を夢見た女性の姿が現れました」
「しかし、彼女は悲しそうで冷たく、二番目の兄とはベールで仕切られているかのようでした。この世に戻ってきたものの、その女性は完全にはこの世にはなじめずに苦しみました。二番目の兄は、望みのない思し慕ぼで気も狂わんばかりになり、彼女と本当に一いっ緒しょになるために、とうとう自みずからの命を絶ちました」
「そうして『死』は、二番目の兄を自分のものにしました」
「しかし三番目の弟は、『死』が何年探しても、決して見つけることができませんでした。三番目の弟は、とても高こう齢れいになったときに、ついに『透とう明めいマント』を脱ぎ、息子にそれを与えました。そして三番目の弟は、『死』を古い友人として迎え、喜んで『死』とともに行き、同じ仲間として、一緒にこの世を去りましたとさ」