一気に人が出ていき、階段下の「必要ひつようの部へ屋や」にはひと握りの人間だけが残った。ハリーもその中に加わった。ウィーズリーおばさんがジニーと言い争っていた。その周りに、ルーピン、フレッド、ジョージ、ビル、フラーがいる。
「あなたは、まだ未成年よ」
ハリーが近づいたとき、ウィーズリーおばさんが娘に向かって怒ど鳴なっていた。
「私が許しません 息子たちは、いいわ。でもあなたは、あなたは家に帰りなさい」
「いやよ」
ジニーは髪かみを大きく揺ゆらして、母親にがっしり握られた腕を引き抜いた。
「私はダンブルドア軍団のメンバーだわ――」
「――未成年のお遊びです」
「その未成年のお遊びが、『あの人』に立ち向かおうとしてるんだ。ほかの誰もやろうとしないことだぜ」フレッドが言った。
「この子は、十六歳です」ウィーズリーおばさんが叫さけんだ。「まだ年端としはも行かないのに あなたたち二人はいったい何を考えてるのやら、この子を連れてくるなんて――」
フレッドとジョージは、ちょっと恥じ入った顔をした。
「ママが正しいよ、ジニー」ビルが優しく言った。「おまえには、こんなことをさせられない。未成年の子は全員去るべきだ。それが正しい」
「私、家になんか帰れないわ」
目に怒りの涙を光らせて、ジニーが叫さけんだ。
「家族みんながここにいるのに、様子もわからないまま家で一人で待っているなんて、耐たえられない。それに――」
ジニーの目が、初めてハリーの目と合った。ジニーはすがるようにハリーを見たが、ハリーは首を横に振った。ジニーは悔くやしそうに顔を背そむけた。
「いいわ」
ホッグズ・ヘッドに戻るトンネルの入口を見つめながら、ジニーが言った。
「それじゃ、もう、さよならを言うわ、そして――」
あわてて走ってくる気配、ドシンという大きな音がした。トンネルをよじ登って出てきた誰かが、勢い余って倒れていた。いちばん手近の椅い子すにすがって立ち上がり、その人物は、ずれた角縁つのぶちメガネを通して周りを見回した。
「遅すぎたかな もう始まったのか たったいま知ったばかりで、それで僕――僕――」