三人が階段を上って再び上の階に出てみると、「必ひつ要ようの部へ屋や」にいた数分の間に城の中の状況がかなり悪化したことが明らかだった。壁かべや天井は前よりひどく振しん動どうし、あたり一面埃ほこりだらけで、いちばん近い窓からハリーが外を見ると、緑と赤の閃せん光こうが城の建物のすぐ下で炸さく裂れつするのが見え、死し喰くい人びとたちがいまにも城に入るところまで近づいていることがわかった。見下ろすと、巨人のグロウプが、屋根からもぎ取ったらしい石のガーゴイルのようなものを振り回して、不ふ機き嫌げんに吼ほえながらうろうろ歩いていくのが見えた。
「グロウプが、何人か踏ふんづけるように願おうぜ」
近くからまた何度か響ひびいてきた悲鳴を聞きながら、ロンが言った。
「味方じゃなければね」
誰かが言った。ハリーが振り向くと、ジニーとトンクスが二人とも杖つえを抜き、隣となりの窓のところで構えていた。窓ガラスが数枚なくなっている。ハリーが見ている間に、ジニーの呪のろいが、下の敵軍に正確に狙ねらい定めて飛んでいった。
「娘さん、よくやった」
埃の中からこちらに向かって走ってきた誰かが吠ほえた。少人数の生徒を率いて、白はく髪はつを振り乱して走り抜けていくアバーフォースの姿を、ハリーは再び目にした。
「どうやら敵は北の胸壁きょうへきを突破しようとしている。敵側の巨人を引き連れているぞ」
「リーマスを見かけた」トンクスがアバーフォースの背に向かって叫さけんだ。
「ドロホフと一いっ騎き打うちしていた」アバーフォースが叫び返した。「そのあとは見ていない」
「トンクス」ジニーが声をかけた。「トンクス、ルーピンはきっと大丈夫――」
しかしトンクスはもう、アバーフォースを追って埃ほこりの中に駆かけ込んでいた。
ジニーは、途方に暮れたように、ハリー、ロン、ハーマイオニーを振り返った。
「二人とも大丈夫だよ」虚むなしい言葉だと知りながら、ハリーが慰なぐさめた。
「ジニー、僕たちはすぐ戻るから、危ない場所から離れて安全にしていてくれ――さあ、行こう」
ハリーは、ロンとハーマイオニーに呼びかけ、三人は「必ひつ要ようの部へ屋や」の前の壁かべまで駆け戻った。壁の向こう側で、「部屋」が次の入室者の願いを待っている。