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世の中へ出る子供たち(1)_小川未明童話集_日语阅读_日语学习网
日期:2024-10-24 10:29  点击:3335

 


正吉しょうきち記憶きおくに、のこっていることがあります。それは、小学校しょうがっこう卒業そつぎょうする、すこしまえのことでした。あるごろからなかのいい三にんは、つれあって、ちの田川先生たがわせんせいをおたずねしたのであります。先生せんせいは、まだ独身どくしんでいられました。アパートのせまいへやにんでいられて、三にんがいくとよろこんで、おちゃれたり、お菓子かししたりして、もてなしてくださいました。
きみたちの卒業そつぎょうも、だんだんちかづいたね。もうこれまでのように、毎日まいにちかおわせることができなくなる。小原おばらくんは、はい学校がっこうがきまったかね。」と、一人ひとりほういて、おっしゃいました。
「はあ、にいさんが、中学校ちゅうがっこうはいったらいいというのですけれど。」と、小原おばらは、したきました。
きみのおにいさんは、やさしいかただ。きみは、もっとからだをじょうぶにせんければいけんよ。」
先生せんせいは、じっと、はや両親りょうしんわかれた小原おばら細々ほそぼそとしたからだていられました。
高橋たかはしは、はや父親ちちおやわかれたけれど、母親ははおやがあるのでした。正吉しょうきちだけは、両親りょうしんがそろっていて、いちばん幸福こうふくうえであったのです。
そとには、さむいからかぜいていました。ときどきガラスまどをガタガタとらしました。
先生せんせいは、しばらくだまっていられましたが、
「みんなは、世間せけんられるような、えらいひとになれなくともいいから、ただしい人間にんげんとなって、どうか幸福こうふくらしてもらいたい。」といって、うつむかれたが、そのとき、なかなみだひかったのです。先生せんせいのお言葉ことばは、むねにしみて、おもわずらず、三にんは、いっしょにあたまげました。
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