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本陣殺人事件--大惨劇(2)
日期:2023-11-21 19:19  点击:250

 コロコロコロコロシャーン! と、十三本の琴の糸を、やたらに引っ搔くような音がし

たかと思うと、つづいてパターンと障子の倒れるような音。そしてそれきり後は死の静寂

に立ち戻った。

 台所の酒盛りも終わっていたらしい。

 銀造は、はげしい胸騒ぎをかんじながら雨戸を開いた。雪はすでにやんで、空には糸の

ような月が冷たく光っている。雪をかぶった庭一面、綿を着たように、ふくれあがってい

た。

 と、その時、雪を踏んでこっちへ近づいてくる人影が見えたので、

「誰か」

 銀造はとがめるように声をかけた。

「ああ、旦那、旦那も今のをお聞きになりましたか」

 銀造は知らなかったが、それは作男の源七という者であった。

「ああ、聞いた。なんだろう、ちょっと待ってくれ。俺おれもいく」

 ガウンの上から外がい套とうをひっかけると、銀造はそこにあった庭下駄をつっかけて

雪の上へおりた。その頃になってあちこちの雨戸が開く音がして、糸子刀自も顔を出し

た。

「源七なの? そこにいるのは? いまの声、あれはなに?」

「琴の音がしてよ。お母さん」

 鈴子も母の袖の下から外を覗いていた。

「なんでしょうね。助けてくれというような声がしたような気がするんで」

 源七はガタガタとふるえている。

 銀造はずかずかと枝折り戸の方へ行ったが、その時になって南の端れの新家から、良介

が帯をしめながら駆けつけて来た。

「伯母さん、なんです。今のは……?」

「ああ良さん、ちょっと離家を見て来て頂戴」

 銀造はがたがたと枝折り戸をゆすぶって見たが、向こう側から閂かんぬきがはめてある

と見えてなかなか開かなかった。良介は二、三度体ごとぶつかって見たが、枝折り戸とい

うものは弱そうに見えていて、案外丈夫なものだった。

「源七、斧おのを持ってこい」

「へえ」

 源七がひっかえそうとした時である。離家のほうでまたピン、ピン、ピーンと琴の糸を

弾くような音がしたかと思うと、それにつづいてブルブルブルンと空気を引っ搔きまわす

ような音がした。糸が切れたらしいのである。

「なんだ。あれは……」

 雪明かりのなかで誰の顔も真まっ蒼さおだった。

「源七、何を愚図愚図しているんだ。早く斧を持って来ないか」

 源七が斧を持って来たところへ、糸子刀自や鈴子をはじめとして、女中やほかの作男た

ちもぞろぞろ集まって来た。良介の妻の秋子も遅れ走ばせながら、提灯ちようちんを持っ

てやって来た。

 一撃、二撃。──源七が斧を揮ふるうと、やがて蝶ちよう番つがいが外れてがっくり枝折

り戸が傾いた。それを見ると良介が、一番に飛び込もうとするのを、何を思ったのか銀造

が肩をつかんでうしろへ引き戻した。

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