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本陣殺人事件--捜査会議(4)
日期:2023-11-22 08:50  点击:298

「そうです。よほど注意して焼いたと見えて、ほとんど完全に燃えきっているのですが、

それでも中に五、六枚、ごくわずかながら燃えのこっている部分があるんです。それがど

うやらこの事件に関係がありはしないかと思われるので、ここに選り出しておきました

が、順序はこのとおりです。残念ながら日付のところが全部焼けちまっているのでわかり

ませんが、多分大正十四年ごろのことと思われます」

 磯川警部がそこに並べたのは、燃え残った五枚の紙片であったが、辛うじて灰になるこ

とをまぬがれたその文句というのが非常に暗示的で、F医師もその点によほど興味をおぼ

えたと見えて、覚え書きのために書きとめておいたから、私もそれをそのまま書き写して

おこう。

 一、……浜へおりて行く途中、いつものところを通ったら、今日もお冬さんが琴を弾いてい

た。私はちかごろあの琴の音をきくと切なくて耐たま……

 二、……あいつだ、あいつだ。私はあの男を憎む。私は生涯あの男を憎む……

 三、……はお冬さんの葬式だ。淋しい日、悲しい日、島は今日も小雨が降っている。お葬式

についていったら、……

 四、……私はよっぽどあいつに決闘を申し込もうかと思った。この譬たとえようもない憤

激。淋しく死んでいったあの人のことを思うと、私はその男を八つ裂きにしてやっても飽

き足らぬ。私はあの男を生涯の仇敵として、憎む、憎む、憎む……

 五、……島を去るまえに私はもう一度お冬さんのお墓に参った。野菊を供えてお墓のまえに

額ぬかずいていると、どこからか琴の音が聞こえて来るような気がした。私は率然とし

て……

「なるほど」

 署長は五枚の燃え残りを、注意深く読み終わると、

「これで見ると賢蔵という人は、どこかの島でお冬さんという女と心易くなった。ところ

がお冬さんという女には、別にふかい関係のある男があって、その男のためにお冬さんは

死んでいった。つまりその男が賢蔵の生涯の仇敵で、そいつが今度の事件の犯人なんだ

ね」

「そういう事になりますね。きっとそこに何か面倒ないきさつがあったのでしょう。そい

つの名前か、せめて島の名でもわかればいいのですが、何しろ日記がこのとおり焼けち

まっているので、それがどうしてもわからないんです。年代からいうと大正十四年、賢蔵

が二十八の年で、当時賢蔵は軽い肺はい尖せんを患って、瀬戸内海の島から島へと、転々

として旅をしていたらしいんですが、この事件の起こった島がどこだか、それは一柳家の

者にもわからないというんです」

「しかし、この写真があれば……そうそう君はこの写真を三本指の男が最初にあらわれた

という飯屋のものに見せたろうね」

「むろん、見せましたよ。飯屋のお主婦と役場の吏員、それからその時一緒にいた馬方に

も見せたんですが、三人ともたしかにこの男にちがいないというんです。むろんこの写真

から見ると老ふけてもいるし、やつれてもいた。それに口の辺に大きな傷痕があって、だ

いぶ人相が変わっているが、それでもたしかにこの男にちがいないと、三人とも断言する

んです」

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