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本陣殺人事件--捜査会議(5)
日期:2023-11-22 08:50  点击:241

「じゃ、まず間違いはないね。ところでその男が飯屋のまえを立ち去ってから、誰も見た

ものはないのかね」

「いや、それはあります」

 側から口を出したのは木村という若い刑事だった。

「同じ日に、田口要助という一柳家の近所に住む百姓がその男を見ているんです。なんで

もそいつ一柳家の門前に立って、こっそりと内部をのぞいていたそうです。で、要助とい

う男が怪しんで様子を見ていると、それに気がついたのかその男は、久──村へ行くのはこ

の路みちを行けばいいのかと、わかりきった事を訊ねたそうです。そしてぶらぶらそのほ

うへ歩いていきましたが、しばらくして要助が振り返ると、一柳家の北側にある崖へ這い

あがっていくのが見えたそうです。今から考えるとそこから一柳家の様子をうかがってい

たんですね。時刻からいって、飯屋のまえを立ち去ってから、五分か十分後のことらしい

んです」

「それが二十三日の夕方、つまり婚礼の日の前々日のことなんだね」

「そうなんです」

「ところで、その後もう一度、結婚式のはじまる少し前に、一柳家の台所へすがたを現わ

したという事だが、その時台所にいた連中や、その、なんといったけ、ああ、田口要助

か。そういう連中にもこの写真を見せたろうね」

「むろん、見せましたよ。しかしこの方は両方とも駄目なんです。何しろ帽子をまぶかに

かぶり、大きなマスクをかけていましたし、それに一柳家の台所はとても暗くて……」

 署長はぼんやり煙草を吹かしながら何か考えていたが、やがて、デスクのうえに眼を落

とした。そこにはつぎのような品々がならんでいる。

 一、コップ

 二、日本刀

 三、日本刀の鞘

 四、三個の琴爪

 五、琴柱

 六、鎌

 署長はそれらの品を眼で追いながら、

「このコップが例の飯屋にあったものだね。で、指紋は……?」

「それについては私から説明いたしましょう」

 署長の言葉を待ちかねていたように、折り鞄かばんをひらいたのは若い鑑識課の男だっ

た。

「ここに写真がありますが、このコップには二種類の指紋がついています。その一つは飯

屋のお主婦さんの指紋ですが、もう一種類は拇指、人差し指、中指とこの三本しかありま

せん。で、これこそ問題の三本指の男の指紋にちがいないのですが、それと同じ指紋が日

本刀、日本刀の鞘、それから琴柱のうえから検出されるのです。ことに琴柱についている

指紋は血に染まっています。日本刀と日本刀の鞘には賢蔵自身の指紋もかすかに残ってい

ますが、琴柱のほうは犯人の指紋以外には何もありません。それから琴爪ですが、これは

裏側に犯人の指紋がなければならん筈ですが、ご覧のとおり、べっとり血がついているの

で、却って指紋の検出ができないのです。鎌のほうはご覧の通り柄がこういう種類の木製

で、これも明確な指紋の検出はできませんでした」

「この鎌は……」

「それはこうです」

 と、磯川警部が体を乗り出した。

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