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本陣殺人事件--捜査会議(6)
日期:2023-11-22 08:50  点击:251

「こいつ離家の庭にある樟の木に、打ち込んであったんですが、調べてみると一柳家には

一週間ほどまえに植木屋が入っている。で、その植木屋を呼び出して調べたところが、た

しかにその時忘れていったにちがいないが、樟の木にうちこんでいったなんて事は、決し

てないと言い張るんです。木鋏ならともかく、鎌を持って樟の木へのぼるなんてことは

ちょっと考えられないから、これは植木屋がいうことを信じてもいいと思う。と、すれば

これがどうして樟の木にうちこんであったのか、それにこいつ物凄く研ぎすましてある、

そこに何か、意味がありはしないかと思って、ともかく押収して来たんですがね」

「どうもいろいろの疑点があるね。ところで現場のほうの指紋は……?」

「現場で三か所から、明確な犯人の指紋が検出されています。一つは例の八畳のうらにあ

る押し入れのなかで、これは血にそまっていません。ところが後の二か所はいずれも血に

そまった指紋で、一つは雨戸の裏側、もう一つは八畳の南西の柱なんです。この後の指紋

はいちばん見やすいところにありながら、いちばん遅れて、発見されているんですが、そ

れというのが、あの家は全部紅殻塗りなんで、つい見落としていたんですね」

「するとどうしても他に犯人があるということになるね、自殺の可能性はまずないね」

「自殺ですって?」

 磯川警部はあきれかえったような眼を瞠った。

「いや、これは僕の意見じゃないがね、自ら心臓を貫いておいて、欄間から刀を外へ投げ

出したんじゃないかという者があるんだ」

「誰がそんな馬鹿げたことを考えたんです。現場を見ればそんな疑問の起こる筈はありま

せんよ。凶器の突っ立っている現場から見て、まずその可能性はありません。それに例の

琴柱ですが、こいつはたしかに雪がやんでからそこにおかれたものにちがいないのです

が、それのあった場所というのが、たとい雨戸をひらいたとしても先ず家の中から投げる

ことは不可能です。しかし、いったい誰がそんな馬鹿げたことを考えたんですか」

「妹せの尾おだよ。あの男にとっちゃ自殺という事になったほうが有難いんだ。保険金を

支払わなくても済むからね」

「保険金……? ああ、妹尾というのは保険会社の代理店をやっている男ですね。賢蔵は

いったいいくら保険に入っているんです」

「五万円だよ」

「五万円?」

 警部が眼を瞠ったのも無理はない。この頃の田舎として五万円はたしかに大金だったに

ちがいない。

「いったい、いつ加入したんです」

「五年前だそうだ」

「五年前? しかし、女房も子供もない賢蔵が、なんだってそんな大きな保険に入ったん

でしょう」

「それはこうだそうだ。賢蔵の弟に隆二という男があるだろう。五年まえにその男が結婚

した時、分けるものを兄弟に分けてしまったのだそうだ。ところが三男の三郎、こいつ親

戚じゅうでの鼻つまみらしく、非常に分けまえが少ない、それに義憤を感じたとでもいう

のか、その時賢蔵が五万円の保険に入って、それを三郎に譲ることにしたんだそうだよ」

「すると保険の受け取り人は三郎になっているんですね」

 磯川警部はふいになんともいえぬ胸騒ぎをかんじはじめた。

 三郎は結婚式の晩、川──村の大叔父を送っていって、そのままそこへ泊まっている。つ

まり関係者のなかで、三郎だけが一番たしかな現場不在証明を持っていることになるのだ

が、その事がかえって何か大きな意味を持っているのではあるまいか。……

 磯川警部はにわかに激しくひげをひねりはじめていた。

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