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本陣殺人事件--探偵小説問答(3)
日期:2023-11-22 09:16  点击:246

 それから二人は庭へおりると、警部は日本刀のささっていた石燈籠の下や、琴柱の発見

された落ち葉溜めをいちいち指さして説明した。

「なるほど。そして足跡はどこにもなかったんですね」

「そうです、そうです。もっとも私がやって来たときにはこの辺いったい、もうかなり踏

み荒らされていましたが、雪のうえにはひとつの足跡もなかったことは久保氏も認めてい

るんですよ」

「ああ、なるほど、雪のうえに足跡がなかったので、さきに来た刑事やお巡りさんが、遠

慮なしにこの辺を踏み荒らしてしまったというわけですね。ときに鎌が突っ立っていたと

いう樟の木はあれですか」

 耕助は庭のあちこちに位置をかえて、あたりの様子を眺めていたが、

「なるほど、ちかごろ庭師が入ったらしく、よく手入れがゆきとどいていますね」

 西の塀際にある松の木も小ざっぱりと刈り込まれて、縄でつった釣り枝にはまだ真新し

い青竹が五、六本渡してあった。耕助が庭石の上に飛び上がって、その青竹のなかを覗い

ているのを見ると、警部は思わず笑い出した。

「どうしたんです。犯人が竹の節のなかに、かくれているとでも思っているんですか」

 警部がからかい気味に訊ねると、耕助はいかにも嬉しそうにがりがり頭を搔きながら、

「そうです、そうです。犯人はこの竹のなかを潜って逃げたのかも知れませんよ。だって

この竹、綺麗に節が抜いてあって、向こうまで筒抜けですからね」

「なんですって」

「植木屋が釣り枝の添え木にするのに、いちいち竹の節を抜くわけはありませんね。それ

にこの枝、ご丁寧に二本も竹の添え木がしてある。縄の結びかたから見ると、一本はたし

かに本職の仕事だが、この節を抜いた竹のほうは素人がやったらしいですね」

 警部も驚いてそばへやって来ると、竹の中を覗いていたが、

「なるほど、節が抜いてある。しかし、これに何か意味があるのかな」

「そうですね。変なところに鎌がぶちこんであったり、筒抜けの竹の添え木があったりし

て、まんざら意味がないとは思えませんね。僕にもまだよく分からないけれど。……や

あ、いらっしゃい、どうぞ」

 だしぬけに耕助が叫んだので警部が振り返ると、枝折り戸のところに隆二と三郎が立っ

ていた。二人のうしろに銀造の顔も見えた。

「入ってもいいですか」

「いいですとも。ねえ、警部さん、構わないでしょう?」

 耕助は警部をふりかえると、

「筒抜けの竹のことは、しばらく、誰にも黙っていて下さい」

 早口にそう言い捨てると枝折り戸のほうへ三人を迎えにいった。隆二と三郎は物珍しそ

うにあたりを見回しながら入って来る。銀造もむずかしい顔をしてその後ろからついて来

た。

「あなたがた、事件以来まだこっちへ入って来られたことはなかったのですか」

「ええ、警察の方の邪魔をしちゃいけないと思って遠慮していたんです。三郎、おまえも

はじめてだろう」

 三郎は黙ってうなずいた。

「もっとも話だけは、良さんから聞いてよく知っています。どうです。何か新しい発見が

ありましたか」

「なかなか。何しろ難しい問題ですからね。警部さん、雨戸をあけてもいいでしょう?」

 耕助はさっき出て来た西の縁側から中へ入ると、南の雨戸を二、三枚ひらいて、

「さて、ここへお掛けなさい。小父さん、あなたもここへ掛けたらどうです」

 隆二と銀造は縁側に腰を下ろしたが、三郎は立ったままで、そうっと離家のなかを覗い

ている。警部は少しはなれたところから、探るようにこの一団を眺めている。

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