行业分类
本陣殺人事件--二通の手紙(2)
日期:2023-11-22 09:19  点击:265

「そこにいるの良さん? ああ、鈴子もいるのね。三郎はどうしたんです。三郎の姿を見

やあしなかった?」

「三ぶちゃん? 三ぶちゃんはまだ寝てるんじゃありませんか」

「いいえ、寝床のなかはもぬけの殻ですよ。あたし、あの音をきいて、一番に三郎を起こ

しにいったんだけど……」

「金田一君はどうしたんですか」

 隆二の声に銀造が霧の中を見回しているとき、離家の中から耕助のけたたましい声がき

こえた。

「誰か医者を呼んで来て下さい。三郎君が……」

 あとは霧のなかに陰にこもってきこえなかったけれど、それをきいたとたん、一同は石

のように体を固くしたようであった。

「三郎が殺された!」

 糸子刀自が、悲痛な声で叫んで、寝間着の袖を眼にあてた。

「お母さん、あなたは向こうへ行っていらっしゃい。ああ、お秋さん、お母さんと鈴子を

頼みます。それから医者を……」

 折りから駆けつけて来た新家の秋子に、糸子刀自と鈴子をまかせておいて、隆二、良

介、銀造の三人は枝折り戸のなかへなだれこんでいった。離家の雨戸はこの間と同じよう

にぴったりしまっていたが、欄間から洩れる灯の色が霧の中に明るい光をはねかえしてい

る。

「あっち、あっち──西の縁側から入って来て下さい」

 そういう耕助の声は、しかし玄関のすぐ内側からきこえるのである。一同が西へまわる

と、このあいだ源七の打ち破った雨戸がいちまいひらいている。そこからなかへ飛びこむ

と、襖ふすまも障子もあけっぴろげて筒抜けになった座敷をとおして、薄暗い玄関の土間

に、耕助がしゃがみこんでいるのが見えた。三人は揉みあうようにしてそのほうへ駆け

寄ったが、すぐしいんと、凍りついたようにその場に立ちすくんでしまったのである。

 玄関の三和土たたきに、三郎が背中を丸くして倒れていた。その背中の右の肩からかい

がら骨のあたりへかけて、真っ赤な血がしぼるようににじんでおり、右手は玄関の戸の内

側によわよわしく爪を立てていた。

 隆二は一瞬、棒を飲んだようにそこに立ちすくんでいたが、すぐ腕をまくりあげて土間

へとびおりると、耕助の体を押しのけるようにして三郎のうえにかがみこんだ。それから

すぐ顔をあげると、

「良さん、すまないが母屋へ行って僕の鞄かばんを持って来てくれないか。それから村の

お医者さんに一刻も早く来てくれるようにって……」

「三ぶちゃんは……三ぶちゃんはいけないのかい」

「いや、たいていは大丈夫と思う。深ふか傷ではずいぶん深傷だが。……気をつけて。

……お母さんをあまり驚かさないようにしてくれたまえ」

 良介はすぐ離家を出ていった。

「何かお手伝いすることはありませんか」

「いや、あまりいじらないほうがいいでしょう。いま良介さんが鞄を持ってきてくれるか

ら」

 隆二の声にどこかそっけない響きがあったので、銀造は眉をしかめて耕助を見た。

小语种学习网  |  本站导航  |  英语学习  |  网页版
09/24 19:20
首页 刷新 顶部