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本陣殺人事件--止むを得ざる密室(1)
日期:2023-11-22 09:47  点击:296

止むを得ざる密室

「さて、僕の想像があたっているとして、三郎君がこの実験の現場を見つけたとして、そ

こにどのような情景が起こったか、それは、三郎君にきいてみなければわかりません。し

かし、三郎君が途中から、この計画に参加したろうことは、彼氏でなければ思いつけぬよ

うな小細工が、この事件に沢山弄してあることでもわかります。私が思うのに、賢蔵氏は

ただ単に他殺と見られさえすればよかったので、そこに犯人をつくっておこうなどとは

思っていなかったにちがいない。ところがそこへ探偵小説マニヤの三郎君が参加して来

た。三郎君から見れば、犯人のない殺人事件なんておかしくてというわけで、急に擬装犯

人をつくることになったのでしょう。それにはそこに死骸となっている三本指の男こそ、

まことに恰好の人物である。賢蔵氏も三郎君も、その男がどういう人物なのか、なぜ自分

の家を訊ねていたのか、それらの事は少しも知らなかったのでしょうが、うさん臭い風態

で、自分の家をきいていた。それだけでも擬装犯人としてはまことに恰好の人物である。

ことに、三郎君はその男の特徴ある三本指の指紋が、川田屋のコップに残っているにちが

いないと気がついたから、大いに創作欲を刺激されたにちがいありません。その指紋を利

用しようということは、探偵小説ファンならば、誰でも思いつくことです。しかも、なお

それだけでは物足りなくて、アルバムの写真や日記の断片で、あくまでも三本指の男と賢

蔵氏のあいだに、何か因縁のもつれがあるように作りあげたのですが、これなどは、探偵

小説マニヤの三郎君ならでは考えられないトリックでしょう。つまり賢蔵氏の頭のいいあ

の装置と、三郎君の探偵小説マニヤらしいトリックがからんで来たために、この事件は

いっそう複雑さをまして来たんですよ。つまりこれは、二人の共同製作だったんです」

「そうだ、あの写真がどうしてあそこに貼ってあったのですか」

「警部さん、あなたはあの写真をアルバムの台紙ごと切り抜かれたでしょう。もしそのあ

とで写真を台紙からはがしてごらんになったら、すぐそこにある細工に気がついた筈なん

です。ほら、ごらんなさい」

 金田一君ははがされた写真と台紙を取り出すと、

「この写真の裏には、まえにほかの台紙に貼りつけてあったのをはがした跡があります。

また、この台紙にはそこに別の写真が貼ってあったらしい跡がのこっています。つまりあ

のアルバムにはまえに他の写真が貼ってあったのをひっぺがして、そのあとへこの写真を

貼りつけたのです。即ち、賢蔵氏が生涯の仇敵として憎んでいた人物は実在したことは実

在したが、それはこの写真の主ではなかったのです」

「しかし、この写真はどうして手に入れたのでしょう」

「それはもちろん、三本指の男が持っていたんですよ」

「しかし、それは妙ですね。人間てそういつも、自分の写真を持って歩くものじゃないで

しょう」

 隆二さんが眉をひそめていった。

「そうですよ。おっしゃるとおりですよ。ふつうの人はね。しかし、ある職業の人物は、

たいていいつも自分の写真を持っていますよ。たとえば自動車の運転手など……」

「あっ」

 警部が急に大きな声をあげた。

「そうなんだ。私もそれを考えていたんだ。こういう型の写真をいつもどこかで見ている

ような気がしていたんです。これは運転手の免許証に貼ってある写真なんですね」

「そうですよ。そうですよ」

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