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本陣殺人事件--止むを得ざる密室(4)
日期:2023-11-22 09:49  点击:290

「金田一さん、それじゃあの三本指の指紋は宵よいからあそこにあったんですか」

「そうですよ、そのとき以外にあの指紋をつける時間はありませんからね。そしてこのこ

とが、私に事件の真相を気づかせた第一の段階なんです。何故といって、三本指の血の指

跡は、ほかにも残っていましたが、見易いところ、即ち屛風にのこっていた血の指紋は琴

爪をはめていた。それに反してはっきり指紋の残る指跡は、みんな非常に発見しにくいと

ころに残っている。これに何か意味があるのではないか。そう考えた私はそこに二つの意

味を考えたのです。この指紋は二か所とも非常におくれて発見されているが、犯人はそれ

を計算に入れていたのではないか。即ち、あまり早く発見されては、犯人にとって都合が

悪いことがあるのではないか。発見されてもかまわないが、早く発見されては都合が悪

い。それはつぎのような理由が考えられる。即ち、血の乾きぐあいや変色の状態、これが

ほかの血の跡とちがっていること、そうです。そういう場合、発見がおくれればおくれる

ほど、その間の相違はわからなくなりますからね。犯人はそれを望んでいたのではない

か。それが第一ですが、第二としては、そういう場所に指紋が残っていたのでは、たとえ

床盃の場合、すでにそこにあったとしても誰も気づくものはなかったろう、と、これが第

二です。しかし、それよりも前に、誰でも一応は考えたでしょうが、犯行の場合、琴爪を

はめるほど用心深い犯人が、あちこちに血にそまった指紋をのこすというのは、どう考え

ても変ですからね。だから、この指紋は故意に、おされたものであり、そしてその時刻

は、犯行よりずっと前であったろうと考えたのです」

「ううん」

 警部が鼻を鳴らしてまた唸った。金田一君はにこにこしながら、

「さて、こうして舞台ごしらえが出来ると、賢蔵さんはあの手頸をもって、母屋のほうへ

かえっていかれた。ここで疑問が起こるのですが、賢蔵さんはその前夜、鞄や洋服を炭焼

きがまへ突っこみにいかれたのだから、その際どうしてこの手頸を始末してしまわなかっ

たのだろう。……これはやはり三郎君の指令であったとしか思えませんね。三郎君にはこ

の事件が面白くて仕方がなかった。自分もあとでこの手頸を利用して一芝居うちたいとい

う誘惑にうちかてなかった。それで兄さんに頼んで手のとどくところへそれを隠しておく

ようにしてもらったのでしょう。といって、まさか自分で預かっとくわけにはいかない。

事件が発見されたあとで、家探しされることは覚悟していなければならなかったでしょう

からねえ。そこで猫の棺桶が利用されたんですが、それが犯行の直後に、鈴子さんによっ

て埋められたのですから、予想以上にうまい隠し場所になったわけですよ」

「そうしておいて書斎へ入って、日記の始末をしたんですね」

「そうです。そうです。その日記はあらかじめ三郎君がアレンジしておいたのでしょう。

ここで注意しなければならないのは、そうして日記の始末をするくらいなら、賢蔵さんは

当然袂のなかにある紙片も始末すべき筈でしょう。それを焼きもせず、しかも一片もなく

さないで、袂の中にちゃんと入れていた……賢蔵さんほどの人にしてそれに気づかぬ筈は

ないから、あの手紙はわざと残しておいたと見るよりほかはないでしょう? さて、それ

から間もなく式がはじまったのですが、その席でも、注意すべき事柄が二つあります。そ

の一つは、あの琴を離家へ持って来るようにしたこと。幸いそのことは村長さんが言い出

してくれたんですが誰も切り出さなかったら、賢蔵氏が言い出すつもりだったのでしょ

う。その証拠に、克子さんに向かって、あの琴はおまえが貰っておおきというような事を

いっている。それからもう一つは、三郎君に川──村のおじさんを送っていくように命令し

ていることです。これは三郎君にアリバイを作らせるためだったのですよ。ところで、私

は隆二さんに一つお訊ねがあるんですがね」

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