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大助かえる(2)
日期:2023-11-24 14:45  点击:254

 吉田の銀さんが、いよいよお嫁さんを貰うことになりました。ところで、そのお嫁さん

を誰だとお思いになって? 嫂あによめの加奈江さんなのです。加奈江さんの御主人安さ

んは、南方へいったきり消息がわからなかったのですが、ちかごろはビルマかどこかで戦

死したことがわかりました、そこで弟さんのお嫁さんになることになったのです。加奈江

さんは銀さんより三つ年上だということです。村の人はお目出度いといっています。そし

て安さんが生きていたら、たいへんなことになるところだったと、ニヤニヤしながら申し

ます。

 わたしはなんだか変な気がしましたが、この話をきいたとき、お祖母さまはとても考え

こんでおしまいになりました。そしてわたしと二人きりになったとき、

「慎吉はいくつになったのかしら」

 と、ひとりごとのようにおっしゃいました。

「兄さんはわたしより八つうえだから、二十五でしょう」

 と、こたえますと、

「そう。……そうすると、梨枝より一つうえだね」

 と、おっしゃいました。わたしがびっくりして、どういうわけかと思ってお祖母さまの

顔を見ていると、お祖母さまは気がついたように、きつい顔をして、こんなことをおっ

しゃいました。

「鶴代、お祖母さまがいまいったことを、決して誰にもいうんじゃありませんよ」

 お祖母さまはそれから、俄にわかに思い立ったように、御仏壇にお灯とう明みようをあ

げ、長いことそのまえで合掌していらっしゃいました。

 わたしには、お祖母さまが何を考えていらっしたのかわかりません。

    〇

(昭和二十一年七月三日)

 ダ イスケカヘルスグ コイ」マキ

    〇

(昭和二十一年七月六日)

 兄さん、お加減はいかがですか。送っていった鹿蔵の話では、療養所へつくと発熱し

て、また赤いものが出たという話なので、お祖母さまもたいへん心配していらっしゃいま

す。

 兄さん、どうぞ昂こう奮ふんなさらないで。あまりここで昂奮なすって、せっかく順調

にいってたお体が、また悪くでもなるようなことがあったら、わたしたちどうしたらいい

のでしょう。お年よられたお祖母さまのことも考えてあげてください。こうなったらも

う、兄さんひとりが頼りなのですから。

 それにしてもあの日の驚き! いま思い出しても腹の底がつめたくなるような気がしま

す。

 あれはさきおとといのことでしたわ。夕方ごろ、わたしは土蔵のなかのお座敷で、兄さ

んに送っていただいた御本を読んでおりました。隣のお部屋ではお祖母さまが、眼め鏡が

ねをかけてほどきものをしていらっしゃいました。梅つ雨ゆどきの、妙に冷えびえする晩

方で小雨が降ったりやんだりしていました。

 わたしはときどき本から眼をあげて、隣のお部屋をふりかえってみると、お祖母さま

は、ほどきものをする手をとかく怠りがちに、なにやら深くかんがえこんでおられる様子

でした。生意気なことをいうようですが、わたしにはそのとき、お祖母さまがなにをかん

がえていられるか、はっきりわかるような気がしたのです。それというのが、その日の昼

過ぎ、吉田の銀さんがあたらしいお嫁さんの、加奈江さんとおそろいで挨あい拶さつに来

られたからです。

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09/24 13:19
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