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黒猫亭事件--四(4)
日期:2023-11-27 11:26  点击:238

 司法主任は急にからだを乗り出すと、

「ふうむ、すると鮎子という女が、みんなの留守にやって来たんだね。そして、おまえは

そのパラソルをどうしたんだね」

「あたし……鮎子さんのだと気がつくと、急にこわくなって、もとのところへしまってお

きました。だって、うっかりそんなことマスターにいうと、あたしがせんに、尾行したこ

とがわかりますし、マダムの耳に入ったら、また大騒動ですから、知らんかおをしていよ

うと思ったのです。そしたら……」

「そしたら……?」

「ええ、それから間もなく用事があって、外へいって、かえって来たら、パラソル、いつ

の間にか、なくなっていました」

「すると、おまえの考えはこうなんだね。二十八日の日に鮎子という女がやって来た。そ

してマダムに殺された。……」

「あっ、そういえば私も思い出した事があるわ」

 そのとき急に横合いから、口をはさんだのは珠江だった。ひどく興奮したくちぶりで、

「ええ、そう、やっぱり一日のことよ。お休みの翌日だったから。私、なんの用事だった

か忘れたけど、裏の庭へ出たんです。すると、ひとところ、土を掘った跡があるんです。

私、それで何気なく、誰があんなとこ掘ったのかしらとマスターに訊ねると、なに、野菜

でもつくろうかと思って掘ってみたんだが、あまり日当たりが悪いから止めにした……

と、マスターがそういったんです」

 珠江はいまにも泣き出しそうな顔で、

「するとあの時、私の踏んでいた土の下に、屍骸がうまっていたんですわね」

 と、いまさら、ぞっとしたように自分の足下をみつめた。

「すると、そこを掘ったのは自分だと、マスター、はっきり認めたんだね」

 珠江は蒼白いかおをしたままこっくりと頷うなずいた。それからこんなふうに、自分の

意見をつけくわえた。

「鮎子という人を殺したのは、マダムかも知れないけれど、屍骸を埋めたのはマスターで

すわ、きっと。……鮎子という人、マスターの恋人だったかも知れないけれど、マスター

にとって、ほんとに大事なひとは、やっぱりマダムだったんです。だから、マダムをかば

うために、屍骸を埋めてしまったんですわ」

 さて、問題の鮎子だが、その女については、加代子も珠江もよく知らなかった。むろ

ん、お君から話はきいていたし、また、マダムがよくこの女のことで、やきもちを焼いて

いるのをきいたことがあるが、会ったことは一度もなかった。お君だけがいちど──それは

一月の終わりだったが──その女を見ているのだが、彼女とても鮎子という名を知っている

だけで、そのほかの事は何も知らなかった。唯、マダムのもらした言葉によって、マス

ターといっしょに、中国から引き揚げて来た女であり、日華ダンスホールで、ダンサーを

していたということだけがわかっていた。

「ええ、あのひと、いまでもどこかで、ダンサーかなんかしてるのよ、きっと。……そう

いうふうでしたもの。とても派手な洋装をして……器量ですか、さあ、……マスターがい

るので、あまりそばへ寄れませんでしたけど、パッと眼につく顔立ちで……そうそう、あ

れ、入れぼくろかしら、ほんとのほくろかしら、唇の右下のところに、かなり大きなほく

ろがありました」

 最後に司法主任は、マダムとマスターの日頃の仲を訊ねてみたが、それに対する三人の

答えはこうであった。

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