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海賊の砦とりで(1)
日期:2023-12-01 13:54  点击:318

  海賊の砦とりで

「や! 金田一さん、見つかったらしいぞ!」

「ええ、行ってみましょう。なるべくけがのないようにつかまえたいものです」

 磯川警部の一行は、いつの間にやら摺鉢山の八合目あたりまでのぼっていった。海賊の

砦とりではすぐ頭のうえに見えている。月明かりの山の細ほそ径みち、一同は木の根や石

ころにつまずきながら、息を切ってのぼっていく。

「旦那、気をつけてください。このへんから防空監視所や高射砲陣地になっていたんだか

ら。壕ごうが一面に掘ってあるんです」

 磯川警部の背後から、だれかが息を切らしながら注意する。

 なるほど、そのへんから勾こう配ばいが急にゆるくなって、傾斜のなめらかな台地に

なっている。そして、その台地のあちこちに、にょきにょきとそそり出した岩や、やせて

ひょろひょろした松の木などを利用して、蜘く蛛もの巣すのように壕が掘ってあり、それ

らの壕には、むき出しのもあったが、なかには掩えん蓋がいにおおわれて地下道になって

いるところもある。

「なるほど、こいつはやっかいだな。このなかにもぐりこまれちゃ、狩り出すのに骨が折

れる」

「ピストルの音がしたのは、もう少し上でしたね」

「どうしたんだろう。急にしんとしてしまったじゃないか」

「とにかく行ってみましょう。気をつけて。相手は飛び道具を持っているんだから」

 足音に気をつけながらのぼっていくと、急に大きな岩角から、数人の人間がとび出して

きた。

「だれだ!」

「清水君じゃないか。いま、ピストルを撃ったのはきみかね」

「ああ、警部さんですか。ええ、向こうからぶっ放してきたもんですから、こっちも応酬

したんです」

「そして、相手は……?」

「それがねえ、突然、消えちまいましたので……どこかそのへんの壕へもぐりこんだらし

いですよ。ああ、ときに変なものを見つけましたよ。おい、きみ、それを出してみてく

れ」

 清水さんのことばに、うしろにひかえていた連中が、てんでに出してみせたのは、鍋な

べ、米の入った袋、みそ瓶がめ、大根が二、三本、魚の干物に包丁がひとつ。ほかに茶ち

や碗わんと箸はしが一いつ対つい。──磯川警部は眼をまるくした。

「どこに──そんなものがあったんだ」

「向こうの壕のなかに」

「いや、おれのいってるのはそれじゃない。どこからこんなものを徴発して来おったろ

う」

「警部さん、それはわかっているじゃありませんか。本鬼頭からですよ」

「しかし、本鬼頭でも、これだけのものがなくなりゃ、気がつかぬというはずがない」

「そりゃ……もちろん、気がついているにちがいないんです。それを黙っていたというの

は……あ、だれかのぼってきましたよ」

 一同がふりかえると、いま、耕助たちがのぼってきた道を、こっちへやってくるものが

ある。しかもそれは一人だった。

「だれだ!」

 清水さんが身構えしながら大だい喝かつした。

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