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第六章 夜はすべての猫が灰色に見える(3)
日期:2023-12-01 14:12  点击:281

「それじゃ、花ちゃんや雪枝さんを殺したのは……」

「むろん、あの男じゃありません。そりゃあ、ああいう凶暴な男だから、つごうの悪いと

ころを見つかったら殺しかねないやつでしょうが、それならばなぜ、梅の枝につるした

り、吊つり鐘がねの下へ伏せたりするのでしょう。それに月代ちゃんが殺された時刻に

は、あいつ必死となって、海賊の砦とりでを逃げまわっていたのですよ」

「じゃ、だれが……」

「そうです。改めてそれを考えなおさなければならなくなりました。この男が一さんでな

いとすれば、三人を殺すわけはないのだから、犯人は別にあることになります。しかし、

ねえ、早苗さん、あの男もまんざらこの事件に関係がないともいえないかもしれないので

すよ。あの男は犯人を知っていたのかもしれない。犯人の姿を見たのかもしれない。それ

で犯人に殺されたのかもしれない……」

 早苗の顔には、急におびえの色がひろがった。

「さっきあの男の死体を発見したとき、警部さんのいったことばをきかれたでしょう。あ

の男は弾丸にあたって崖から落ちたのではなかった。あの男の後頭部には、恐ろしい裂傷

があった。頭ず蓋がい骨こつもこわれていた。ところがあのへんにはどこにも、その傷に

相当するような石ころや岩角はなかった。それのみならず……」

 と、耕助は息をうちへ吸いこむと、

「その傷の状態というのが、花ちゃんの場合とたいへんよく似ているんですよ。つまりあ

の男は、花ちゃんを殴って昏こん倒とうさせたのと同じ凶器で殴り殺されたのかもしれな

いのです」

「まあ、恐ろしい……」

 早苗の顔からはすっかり光沢がなくなった。さむざむとケバ立った毛孔のひとつひとつ

が恐れおののいているように見える。

「そう、恐ろしいやつです。一晩に一人ずつ三晩つづけて……確実に、冷血に……一分の

狂いもなく計画を遂行していったのです。ところでねえ。早苗さん」

 耕助はさぐるような眼で早苗を見ながら、

「この島の人たちは、ずいぶん妙な考えを持っていますねえ。本家の千万太君が死んだか

ら、三人の娘が殺されるのだ。……つまり一さんに本鬼頭をつがせるために……こういう

考えは早苗さん、あなた自身にもいくらかあったのでしょう。だからこそ、ああしてあか

の他人を兄さんとまちがい、あの男が三人を殺すのだと思われたのでしょう。問題はそこ

ですがねえ。早苗さん、そういう考えにはなにか根拠があるんですか。千万太君が死んだ

ら、三人の娘が殺されるという、……なにかそういうような話が、前からあったのです

か」

 早苗は大きな眼をみはって、じっと耕助の顔を見つめている。その眼のなかには、かす

かな驚きと動揺があった。

「実はねえ、早苗さん、ぼくはここへ来たのもそのためなんですよ。千万太君ですら、そ

ういう考えを持っていたんです」

「まあ!」

 不意に早苗のくちびるから、鋭いおどろきの叫びがほとばしった。

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