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第六章 夜はすべての猫が灰色に見える(4)
日期:2023-12-01 14:13  点击:263

「本家の兄さんが……そんなことをいったんですの……あの、兄さんが……」

「ええ、そう、ぼくがなぜこんな離れ小島へ来たと思います。千万太君の頼みによって、

こういう悲劇の起こることを、未然に防ごうと思ってやってきたのですよ。千万太君はこ

ういったのです。おれが死ねば、三人の妹が殺される。獄門島へ行ってくれ。三人の妹を

助けてくれ。……問題はそこですよ。早苗さん、千万太君が死んだらだれが三人の妹さん

たちを殺すのでしょう。いや、それよりも千万太君は、どうしてそれを知っていたので

しょう」

 早苗の顔はいよいよ蒼くなった。くちびるまで紫色に朽ちて、カサカサに乾いていた。

「早苗さん、あなたはそれに心当たりはありませんか」

「わかりません」

 早苗は恐怖の声をふりしぼった。

「そんな……恐ろしいこと、あたしにはわかりません!」

 そしてそれきり口がきけなくなったように黙りこんでしまった。

 そこへ磯川警部が入ってきた。

「早苗さん、これ、お宅のものでしょうね」

 警部が出してみせたのは一本の日本手ぬぐいである。ひろげてみると、鬼の面のうえに

本という字が染め出してある。早苗は大きく眼をみはって、警部の顔と手ぬぐいを見くら

べていたが、

「ああ、その手ぬぐいで月代ちゃんを……」

「そう、月代さんは右手でしっかりこの手ぬぐいの端を握っていましたよ。祈き禱とうに

熱中しているところを、うしろから縊くびられたのですね。ところが、この手ぬぐいはか

なり汚れているが、それほど古いものではない。ほら、こっちの切り口なんかまだ新し

い。ちかごろだれかにこういう手ぬぐいを……」

「存じません」

 早苗は言下にこたえたが、そのあとへつぎのように付け加えた。

「ちかごろ新しく手ぬぐいをおろした覚えはありませんし、また、ひとさまに差し上げた

記憶もございません。でも、そんな手ぬぐい、島の人ならたいてい持っているはずです

わ。木も綿めん類が自由なころには、盆暮れのほかに、祝儀不祝儀に配ったものですか

ら。……」

「お宅にはまだこんな手ぬぐい、ほかにありますか」

「ええ、まだ二巻きか三巻きはあると思います。木綿類が統制になるというので、お祖父

さまがたくさん染めさせておいたのです。でも、その後だんだん不自由になってきたもの

ですから、配りものに使うことは見合わせていますし、うちでも倹約して、なるべく新し

いのをおろさないようにしているんですよ」

「ああ、それじゃその手ぬぐいは、反たんのまま染めてあるのですね」

 耕助が口をはさんだ。

「ええ、そう、配りものに使う日本手ぬぐいは、みんなそうするんですわ。いるだけ切っ

て使うんです」

 金田一耕助は警部の手から手ぬぐいを受け取ると、あちこち調べていたが、そのまま

黙って考えこんだ。

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