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忠臣蔵十二段返し(4)
日期:2023-12-01 14:45  点击:305

「いや、ありがとうございます。たいへん参考になることをきかせていただきました」

 耕助がしずんだ調子で礼をいうと、儀兵衛さんはおだやかに、

「いや、あなたがたの職業もたいへんですな。ずいぶん頭をつかうことでしょう」

「いやあ」

 耕助は力なくわらって、

「警察の連中がやってきたので、すっかり素性がばれちまいまして」

「警察のひとがやってきたので……?」

 儀兵衛さんはふいと眉まゆをひそめると、

「それはどういうわけかな。わたしはずっとせんから、あんたのことは知ってましたよ」

「な、な、な、なんですって?」

 耕助は突然、脳天から楔くさびをぶちこまれたような驚きを感じた。

「ぼ、ぼ、ぼ、ぼくのことを御存じだったんですって? だ、だ、だ、だれがそんなこと

……」

「村長だよ。いや、わしは村長からじかにきいたわけじゃない。助役からきいたのじゃ

が、金田一……珍しい名字だからな。村長はすぐ、ずっとせんの、……なんといったか

な、そうそう『本陣殺人事件』……あれを思い出したらしい。役場にある古い新聞のとじ

こみをひっぱり出して調べているところを、助役が見たそうじゃ。そのとき、村長はだれ

にもこのことはいわぬようにと口止めしたが、助役はわしにだけ、こっそり耳打ちしてく

れてな。しかし、妙だな、あんた、いままでそのことに気がつかなかったのかな」

 村長が自分のことを知っていた。村長が知っていたからには、和尚や幸庵さん、少なく

とも和尚だけは知っていたにちがいない。

 おお、なんということだ? 耕助にとって文字どおりそれは青天の霹へき靂れきであっ

た。

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