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第二十章 刺客(5)
日期:2023-12-07 16:28  点击:261

 金田一耕助はいよいよ膝を乗り出して、

「お住持さん、あなたはしかしどうして御存じなんです。この事件が椿つばき家けの殺人

事件と関係があるということを。……妙海さんがお話ししたのですか」

 慈道さんはうなずいて、

「そう、一昨日おととい、二日のお午ひるまえのことじゃったな。妙海がたくさんの新聞

をわしづかみにして、わしのところへやって来て、この事件について心当たりがあると

いって見せてくれたのが、椿家の事件の記事じゃった。妙海はその前日、やはりその事件

について相談しようと、神戸の識しり合いをたずねていったが、会えなかったとやらで、

それでわしのところへ相談に来たのじゃな」

「それで……それで、妙海さんは、なにかいってましたか、犯人について……」

「それがな、金田一さん、いま考えても残念でならんのだが、妙海は結局、肝かん腎じん

な点については、なにひとつ、まとまったことは打ちあけていかなんだのじゃな」

「ああ!」

 耕助の唇からうめき声がもれる。希望はつねにつかんだと思ったせつな消えるのだ。

「これはわしにも罪がある。話があまりだしぬけじゃったで、わしも半信半疑で、親身に

なって聞いてやる余裕がなかったのじゃな。それに妙海も気が顚てん倒とうしていたで、

話もしどろもどろ、それに、肝腎かなめのことについては、まだ打ち明ける決心がついて

おらなんだらしい。それで、気が落ちついたら、もういちどおいでとかえしたのじゃ

が……。いまになってみると、それが残念でならぬ。なにがなんでもあのとき聞いておく

のじゃった」

 慈道さんは溜ため息をついたが、そこで急に想い出したように、

「ただな、そのときわしは非常に意外なことを妙海から聞いた。ひょっとすると、これが

なにかの参考になりゃせんかと思うから申し上げるが、妙海と椿家の関係じゃな」

「はあ、はあ……」

 耕助は出川刑事と顔見あわせて膝を乗り出した。

「わしもこのことは初耳じゃったのでびっくりしたが、妙海は俗名こまといって、娘がひ

とりあった。お小さ夜よとゆうてな」

「はあ、それは存じております」

「ああ、そう、それじゃお小夜の父親というのを御存じかな」

「いえ、それがわからないので弱っているんです。お小夜は誰の……」

「新宮さん、御存じじゃろ、新聞にも名前が出ていたから、あのひととおこまのあいだに

うまれた子じゃげな」

 耕助ははっと出川刑事と顔見あわせる。それではおこまを手籠めにして、子をうませた

のは新宮子爵だったのか。

「それで妙海は非常におそれていたのじゃ。椿さんの家の人殺しはこれではすまない。今

度は新宮さんが殺されるにちがいないと……」

 金田一耕助は思わずぎょっと出川刑事と顔見合わせる。英語で周章狼ろう狽ばいすると

いうことを He has a bee in his head というそうだが、文字どおりそのとき耕助の頭のなかに

は、蜂はちがブンブン飛びくるっているような感じだった。

「しかし、お住持さん、新宮さんがお小夜の父だからといって、なんだって殺されるとい

うんです」

「さあ、それがわからん。そのとおり妙海の話というのは支離滅裂じゃったのじゃ。しか

し、いまから思えばそれというのも、妙海が肝腎かなめなことを打ち明けるのを、ため

らっていたせいらしい」

「お住持さんはお小夜という娘を御存じですか」

 これは出川刑事の質問である。

「ああ、知っている。いちど会ったことがある」

「いつ、どこで……?」

「昭和十八年か九年ごろじゃったな。住吉のさるうちで……と、こうゆうたところで、あ

んたがたにはわかるまい。それにはわしと妙海が識しり合いになったきっかけを話さねば

ならんが……」

 そこで慈道さんの打ち明けた話というのはこうである。

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