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第二十二章 指輪(2)
日期:2023-12-11 13:04  点击:226

「なるほど、そして、警部さんはそれを誰だと思っていらっしゃるんです。玉虫伯爵や新

宮子爵に対して、そのような神秘な力を持つ犯人を……」

「椿子し爵しやく!」

 言下にきっぱり警部がこたえた。何かを嚙かみきるような強い調子である。

「椿子爵……?」

 鸚おう鵡むがえしに金田一耕助。

「しかし、椿子爵は玉虫伯爵や新宮さんにとっちゃ、軽けい蔑べつの的だったというじゃ

ありませんか」

「なるほど、以前はそうだったでしょう。いや、そうであったからこそ、いまもしかり

に、椿子爵が生きているとすれば、あのひとたちは、どのような強いショックにうたれる

でしょう。その子爵が、だしぬけに眼の前へあらわれたら……とにかく、わたしにゃ椿子

爵以外に、これほど強い力を持つ人物を、考えることは出来ませんねえ」

「なるほど」

 しばらく黙ってかんがえていたのちに、金田一耕助は合あい槌づちをうった。それから

思い出したように、

「ときに目賀先生やお信乃を呼び出した、贋にせ電話や贋電報のぬしはわかりませんか」

「電話のほうはわからない。最初お種が出たんだが、どうも公衆電話らしかったというん

です。目賀先生も何しろちかごろの電話だから、ガーガーと雑音ばかり多くて、誰の声と

もわからなかったといっている。但ただし、男の声だったことだけは間違いないというん

ですがね」

「目賀先生の会の予定は今夜だったんですね。そのことを知っているのは……?」

「この家のものはみんな知ってたそうです。ちかごろでは新宮さんのほうもいっしょに

なって、みんなこちらで夕食をとるんだが、三日の晩だったかに目賀博士が、そのことを

洩もらしたそうだ」

「電話がかかって来たのは夕方の何時ごろ?」

「四時半ごろだそうです。会は横浜で六時からというんだから、目賀博士は大あわてにあ

わてて出ていったんですね。ところがそれから約半時間たった五時ごろ、お信乃のところ

に電報が来たんです」

「やはりお種が受けとったんですね」

「いや、なんでもそのとき新宮さんが外出さきからかえって来て、門のところで配達夫に

出あったとかで、受け取ってきてお種にわたしたそうですがね」

「なるほど、それでお信乃さんも、急いで出掛けたというわけですね」

 金田一耕助はだまって爪つめをかみながら、しばらく考えこんでいたが、

「どうも妙ですね」

「何が?」

「何がって、お話を聞いていると、そいつは四日の日、菊江さんは芝居見物に、三島君は

買い出しに出掛けて、かえりがおそくなるだろうことを知っていた。また、美禰子さんと

一彦君も夕食後、就職運動に出掛けることを知っていた。と、すると、邪魔になるのは目

賀博士とお信乃だけだから、このふたりを贋電報や贋電話でおびき出した。……と、そう

いうことになるんでしょう」

「そう、そのとおり。しかし、それがどうして妙なんですか」

「どうしてって、そいつはなんだって、そんな手数をかけてまで、みんなをこの屋敷から

追っ払わなければならなかったんです」

 警部は呆あきれたように眼をまるくして、

「それは云うまでもなく、新宮さんを殺害するために……」

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