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第二十二章 指輪(3)
日期:2023-12-11 13:04  点击:227

「いいえ、だから不思議なんです。新宮さんを殺すなら、なにもそんな手数をかけなくて

も、ほかにいくらでもチャンスはあるはずですよ。もし、しいて新宮さんの周囲のものを

追っ払わねばならぬ必要があったとしたら、まず、第一に華子夫人を追っ払うべきじゃな

いでしょうか。ところが、さっきのお話によれば、華子夫人が外出しなければならぬ羽目

になったのは、新宮さんの命令じゃありませんか」

 警部はまた眼をまるくして、

「金田一さん、あんたは何を考えているんです。新宮さんは被害者ですよ。殺されたんで

すよ」

「ええ、そう、そのとおり。そして、ぼくは何も考えてやあしません。唯ただ不思議だと

いってるんです。ところで華子夫人が出掛けたのは金策のためだったんですね」

「ええ、そう」

「新宮さんはそんなに金につまっていたんですか」

「それはもう絶対ですね。新宮さんはたちの悪い負債……と、いうより、じぶんの詐欺行

為の埋め合わせをしなければならなくなっていたんです。それが遅れると訴訟を起こされ

る。裁判となると絶対敗けでさあ。じつにたちの悪い詐欺をやってるんですからね。だか

ら、ここでどうしても、まとまった金をつくって内済にしなきゃ、一身の破滅というとこ

ろまで、追いつめられていたんです」

 新宮利彦の詐欺行為と聞いても、金田一耕助はかくべつ驚きもせず、

「なるほど、その金を奥さんにつくらせようとしたんですね。で、金策は出来たんです

か」

「いや、それは出来なかったらしい」

 と、何気なくいったあとで、警部ははっと気がついたように大きく息をはずませなが

ら、

「金田一さん! あなたはまさか華子夫人が、金策に失敗したために……」

「いや、いや、いや!」

 金田一耕助はあわててそれをさえぎると、

「ぼくはそんなこと考えてやあしませんよ。ねえ、警部さん、誰が犯人であるにしろ、こ

の事件の動機はとてもそんな単純なものじゃありません。ぼくはただ、腑ふに落ちないと

ころを追究しているだけなんです。新宮さんを殺すのに、華子夫人をおびき出さないで、

なぜお信乃をおびき出したか、目賀博士は男だから邪魔になるとしても、お信乃をなぜそ

んなに邪魔にするんです。あの女はいつも秌子夫人につきっきりですから、新宮さんを殺す

のに、それほど邪魔になるわけはないじゃありませんか」

 等々力警部はふいと眉まゆをひそめて、

「ああ、金田一さん、あんたはあのことをいってるんですな。四日の晩、お種と三島が立

ちぎきしたという目賀博士のことば。……秌子夫人にむかって、おまえが誰かと打ちあわせ

て、わしとお信乃をおびき出したんだ。そして、その留守中に、……と、罵ののしってい

たあの言葉。……」

 耕助はぼんやりうなずいて、

「そう、それもあります、不思議ですねえ。目賀博士はなんだって、そんな幻想をいだい

たんでしょう。そして、留守中に、秌子夫人が、なにをしたといいたかったんでしょう。警

部さん、目賀博士は、それについて、いったいなんと釈明してるんですか」

「ところが、博士はそんなことをいった覚えはないというんですね。もし、かりに、そん

なことを口走ったとしたら、むしゃくしゃ腹で当たり散らしていたところだから、口から

出まかせをいったんだろう……と」

「むしゃくしゃ腹というのは……」

「贋にせ電話でおびき出されたのが、癪しやくにさわってたまらなかったというんでね」

「しかし、それだからって秌子夫人が……」

 金田一耕助はあくまでその点を追究しようとして、急に気をかえたように、

「いや、そのことはそれくらいにして、それじゃもう一度、電報のことにかえりましょ

う。電報の発信局はわかってるんでしょう」

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