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第二十二章 指輪(5)
日期:2023-12-11 13:06  点击:303

「むろん、そんなことに、いちいち注意するものはありませんからね。ふだん、それは入

れっぱなしになっているそうで、われわれが調べたときにもONになっていましたがね」

「ところで、この電蓄は……?」

「誰も知らぬというんです。この家のものじゃないんですね。と、すると犯人が持ちこん

だものにちがいなく、その線からたぐっていけやあしないかと思うんですが、こうして残

していったところを見ると、犯人にもよほど自信があるんでしょうね。えっ、なに!」

 警部と金田一耕助が、いっせいにうしろをふりかえったのは、だしぬけに刑事がなにか

叫んだからである。刑事は昂こう奮ふんした面持ちで、

「け、警部さん、妙なものがありますよ。あそこに指輪みたいなものが……」

「なに、指輪が……?」

 警部が指さしたのは、天井からぶらさがった無数の鉢のひとつである。鉢の直径は十四

センチ、そこに同じ植物が一本ずつ植わっているが、それらの植物はどれも長い蔓つるの

さきに、袋をひとつずつぶらさげている。袋の直径は二センチぐらい、深さが四、五セン

チあって、それぞれ蓋ふたを持っている。その蓋のなかには閉じているものもあれば、開

いているものもある。

 そこにぶらさがっているカードによって、それが「うつぼかずら」という食虫植物であ

ることがわかったが、刑事がのぞいたのは、そのうつぼかずらの袋のひとつであった。

 警部もそれをのぞいて見て、大きく眉まゆをつりあげたが、すぐ指をつっこんで、袋の

なかからつまみ出したのは大きなダイヤをちりばめた金の指輪である。

 金田一耕助はそれを見ると、びっくりしたようにそばからのぞきこんで、

「あっ、こ、これは……」

「金田一さん、あんたはこれに見おぼえがありますか」

「あります。たしかにそうだ。いつかの占いの晩、秌子夫人の指にこの指輪が光っていたの

をおぼえています。刑事さん、すみませんが、美禰子さんを呼んで来てくれませんか」

 美禰子はすぐにやって来た。そして、その指輪を見るとびっくりしたように、たしかに

母のものにちがいないと断言し、四日の夕食のときまでその指輪が、母の指に光っていた

と保証した。

「そ、そ、そして、お母さんは」

 と、金田一耕助は昂奮のためにむやみやたらと、もじゃもじゃ頭をかきまわしながら、

「この指輪がなくなったことについて、騒いでやしませんでしたか」

「いいえ、ちっとも……」

「でも、お母さんは宝石狂といわれるくらい、宝石に愛着を持っていられるという話でし

たね。指輪がなくなったら……」

「それこそ大騒ぎですわ。それだのに、あたし、ちっともそんな話を聞かなかったのは、

いったいどういうわけでしょう」

 美禰子は狐きつねにつままれたような顔色だったが、そのときだしぬけに昂奮した声で

叫んだのは金田一耕助。

「警部さん、警部さん、もう一度呼んでください。あの贋電報をうけつけた、砧きぬた郵

便局の局員を……。その男は昨日この家で、ひとりだけ会わない人物があったはずなんで

す」

 警部もびっくりしたように、

「誰です金田一さん、それは誰です」

「新宮利彦氏」

 

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