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第二十三章 指(4)
日期:2023-12-11 13:10  点击:294

 金田一耕助はそのことに、異常な興味をおぼえてる。

 そこへ秌子のかわりとして、老女の信乃がやってきた。

「秌子さまはお加減がお悪いので、わたしがかわりにまいりました」

 信乃は切り口上でのべると、禿はげ鷹たかのような眼で警部と耕助を見くらべている。

 等々力警部は眉まゆをひそめて、

「それは困りますね。お信乃さん、これはやっぱり御当人にきていただかねば。……」

「いいえ、秌子さまはこちらへお見えになりません。あのかたにはこんなこと、ふさわしく

ないのです」

 信乃はてこでも動きそうにない。じっさい、秌子をここへ呼ぼうとすれば、家鳴り震動す

るほどの、大騒ぎを演じなければならないだろう。警部はあきらめたように苦笑した。

「それではあなたでも結構ですが、あなたは奥さんの指輪が温室から発見されたのを御存

じでしょう」

「はい、そのことなら美禰子さんから聞きました」

「それについて、奥さんはなんといってらっしゃるのです。紛失したとか、たれかにわた

したとか。……」

 信乃はすこしもためらわずに、

「それは秌子さまが新宮さんに差しあげたのだと伺っております。じじつ、またそれにちが

いございますまい」

「そして、それはいつのことですか」

 横から口を出した金田一耕助を、信乃はギロリと凄すごい眼でにらみながら、

「四日の晩、みんなが出払ったあとだそうで。……茶の間から秌子さまが、じぶんのお居間

へかえっていらっしゃると、新宮さんがついてきて、あまりしつこくお頼みになるものだ

から。……そこはやっぱり御兄妹ですから、秌子さまも新宮さんの窮状に同情されて……そ

れで指輪を差しあげたのだと思います」

「あなたは四日の晩、成城からかえっていらっしゃったとき、奥さんの指から指輪がなく

なっていることに気がつきませんでしたか」

 信乃はちょっとためらったのち、

「はあ、あの、そのときは気がつきませんでした。気がついたのはその翌朝、つまり昨日

の朝のことでございました。そこで奥さんを問いつめて、新宮さんに差しあげたんだとい

うことを、はじめて知ったようなしまつで……」

「それじゃ、それは新宮さんの死体が発見されたあとですね。なぜそのとき、指輪のこと

をおっしゃらなかったんですか。当然、新宮さんの死体が持っているべきはずの指輪のこ

とを。……」

「それは……それは……」

 信乃はちょっと追いつめられたような表情をしたが、すぐそれを跳ねっかえすように、

「それはやっぱり動どう顚てんしていたからです。それにわたしども、なんでもかんで

も、なるべくそうっとしておきたい習慣がついているんです。だってこの春からあまりい

ろんなことが起こるものですから……」

 信乃のことばにも多分の真実性はある。しかし、ただそれだけのこととは思えない。あ

れだけ高価な指輪のことを、なぜ、黙って過ごそうとしたのだろう。

「ところで……」

 と、こんどは警部が乗りだして、

「あなたを贋にせ電報で呼び出した人物ですがね。だいたい新宮さんに間違いない、とい

うことになってるんですが、それについて、あなたはどうお考えですか」

 信乃は睫まつ毛げひと筋動かさず、

「どうもこうもございません。秌子さまが新宮さんに指輪をまきあげられた……いえ、あ

の、差しあげたと聞いたときから、わたしどもはあの電報のぬしが、新宮さんだと思って

いました」

 等々力警部はちらと耕助のほうを見て、

「どうして……?」

「どうしてって、いかにも新宮さんのやりそうなことだからです。あのひとはそういう卑

劣なかたなんです。すきあらば秌子さまにおどりかかって、金をまきあげようとしていたん

です。わたしども……わたしと目賀先生は、だから片時も秌子さまから、目がはなせなかっ

たんです。秌子さまを新宮さんのいうままにさせておいたら、いくら財産があったところで

足りっこはございません」

 それはだいたい、金田一耕助の想像したとおりだから、信乃が真実をのべているものと

思っても間違いはなかった。

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