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第二十六章 秌あき子こは何に驚いたか(4)
日期:2023-12-11 13:49  点击:262

「でも、これだけ出来るというのも、みんな三島さんのおかげよ。あのひとがいなきゃ手

も足も出ないわ。それはそうと……」

 と、菊江はいくらか声をひそめるようにして、

「あのひとどうして? 目賀先生……」

 妙に意味ありげなそのいいかたに、金田一耕助がおやと菊江の顔を見なおしたとき、

「おお、蟇がま仙人なら、ここにいるぞ」

 半裸体の目賀博士が、せいぜいおどけたつもりでそういいながら、よたよたとガニ股ま

たで入ってきた。

 いつもならこんなとき、さっそく言葉がたきにならずにおかぬ菊江だのに、どういうも

のか今日はちょっと表情をかたくして、一歩あとずさりをするようにする。テーブルのう

えに皿をならべていた美禰子と華子も、ちらと眼を見かわせると、そのまま無言で、いく

らか体をかたくした。

 なにかあったな!

 金田一耕助ははっと胸騒ぎがする感じで、脂あぶらぎった蟇仙人と、青じろんだ女たち

の顔を見くらべている。

 目賀博士はぎらぎらするような眼で一同を見まわしながら、

「あっはっは、どうしたんだ。みんな、なにをそのようにきょときょとしてるんじゃ。さ

あ、御馳走になろうじゃないか。なにはどうした、警部さんは?」

「警部さんは電話です」

「ああ、そうか、そうか。それはそうと三島はどうしたんじゃ。はやくグラスを持って来

んかい」

 ぶつくさいいながら目賀博士は、そこにあったウィスキーとグラスを取りあげると、自

分で勝手についで飲んでいる。華子はカップに紅茶をつぐと、

「金田一先生、御自由におつまみになって」

「お行儀が悪いけど手づかみよ」

「はあ、どうも。……」

 そこへ東太郎と一彦が入ってきた。

「ああ、グラスが来た来た。金田一さん、ひとつどうじゃ」

「いいえ、ぼくは紅茶のほうが……そうですか、では、ひとつ……」

「三島君、君はどうじゃな。なに、いらん、あっはっは、客のまえだと思っていやに神妙

にしてるな。さっきは相当のんだくせに。ときに警部さんはおそいな」

 そこへ警部が汗をふきふき、不機嫌なかおをしてかえって来た。

「警部さん、どうかしましたか」

「ふむ、たったいま横須賀線が不通になったそうです」

「えっ?」

 一同思わず警部の顔を見直した。

「土砂崩壊かなにかで、当分復旧の見込みがたたんというんですよ」

「まあ、それじゃ あき子こさまは……?」

 華子が心配そうに眉まゆをひそめる。

「いや、奥さんは大丈夫でしょう。奥さんが出かけられたのは──?」

「四時ちょっと過ぎでした」

「それなら大丈夫。不通になったのは六時過ぎだというから──。なんでも戸と塚つかへん

で崖がけ崩くずれがあったらしい」

「警部さん、もし電車が通っていたら、どうなさるおつもりだったんですか」

「むろん、誰かを迎えにやって、こっちへかえって貰もらうつもりだった。こんなとき

に、むやみにここを離れてもらっちゃ、困りますからな」

 警部はにがりきっている。

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