行业分类
第二十六章 秌あき子こは何に驚いたか(7)
日期:2023-12-11 13:50  点击:229

 金田一耕助は失望したように、ゆっくり首を左右にふると、立ちあがって窓際へいき、

ちょっと窓を開いたがまたあわててそれをしめた。危く窓が吹きちぎられそうになったか

らである。

 耕助は茫ぼう然ぜんたる眼で、しばらく宙をにらんでいたが、

「仕方がない、決行しよう!」

 と、急にくるりと警部のほうをふりかえると、

「警部さん、表に自動車が一台いますね。それじゃ……」

 と、すばやく室内の人数をかぞえると、

「もう二台、自動車をくめんしてください。それから刑事さんを二、三人、いや、四、五

……」

「ど、どうするんです。金田一さん」

「これからみんなして鎌倉へ出かけるんです。このなかに悪魔がいるにちがいない。そし

て、秌子奥様はそれを発見されたんだ。鉄は熱いうちに打たなきゃならない。誰が悪魔だか

子奥さまにいっていただくんです」

 警部が風のように部屋をとび出していった。電話をかけにいったのである。

「でも、あのこの家は……?」

 華子がおろおろするのをおっかぶせるように、

「大丈夫、刑事さんに見張りをしてもらいます」

 ほかのものは誰も口をきかず、しびれたような顔をして突っ立っていた。

 金田一耕助にとっては、いや、金田一耕助のみならず、すべてのひとにとって、おそら

くこの夜の冒険は、生涯消しがたい印象となってのこるだろう。

 文字どおりそれは恐怖と戦せん慄りつの三時間だった。いよいよ募る烈風と豪雨をつい

て、三台の自動車は遮二無二鎌倉にむかって驀ばく進しんした。あとから思えば一台も事

故を起こさず無事に目的地へたどりついたのは、まるで奇き蹟せきみたいなものである。

 金田一耕助と等々力警部、それから美禰子の三人をのせた先頭の自動車が、北鎌倉の別

荘へついたのは、もう十時をだいぶ過ぎていたが、むろんそのへん一帯も停電でまっくら

だった。

 ベルをおしてもきかないので、耕助がどんどん玄関の格子をたたくと、懐中電気をふり

かざしたお種がなかから開いたが、耕助の顔を見るとふいに大きく眼を見張った。お種は

それから警部を見、最後に美禰子を発見したが、そのとたん、大きく口をあけ、両手をふ

るわせながら声なき叫びを張りあげた。

「あ、お、お種さん、どう、どうしたんだ」

 くらくらと倒れようとするお種のからだを、あわてて抱きとめた耕助のあたまには、

さっと不吉な想いがひらめく。

「奥さんがどうかされたのか」

「悪魔が……」

「えっ、悪魔が……?」

「笛を吹いたんです。そして奥様は……」

「奥様は……?」

「お亡くなりになりました。目賀先生の調合されたお薬をのんで……」

小语种学习网  |  本站导航  |  英语学习  |  网页版
09/22 21:24
首页 刷新 顶部