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第二章 大惨劇--あいびき(2)
日期:2023-12-20 13:06  点击:283

「うん、たいへんなことが起こったのだ。それについて、いまにお巡りさんが来ることに

なっているんだ」

「お巡りさん!」

 八千代さんの眼のなかに、さっと怯おびえの色がかすめて走った。

「直記さん!」

「いや、とにかく、警官が来るまでに打合わせをしておかなきゃならん。八っちゃん、お

まえ大急ぎで着替えをしておいで。ぼくたち食堂で待っている」

 八千代さんは十分もたたぬうちに、アフタヌーンに着更えて食堂へ現われたが、見ると

その顔は、紙のように真っ白になっていた。

「直記さん」

 彼女はドアのところで立ち止まると、怯えたような眼のいろで、私たちの顔を見くらべ

ながら、

「あたし……昨夜……また……病気を起こしたの?」

 直記も私もこたえなかった。しかし、こたえないでいることが、何よりも強く彼女の言

葉を肯定しているのだ。八千代さんの怯えのいろはいよいよ濃くなった。

「でも……あのスリッパはどうしたの?……何かしら……黒いものがべっとりついて……

あれ、血じゃなくって……?」

 八千代さんは猫のような足音のない歩きかたで、私たちのほうへ近づいて来ると、一歩

一歩、しゃがれた声で、囁ささやくようにそういった。

「八っちゃん、おまえ、あれに気がついたのかい」

「ええ、いま、靴にはきかえようとして……直記さん、いったい、何事が起こったの、

いったい私が……何をしたの」

「八っちゃん、おまえ、昨夜、蜂屋とはなれの洋館であう約束をしていたのかい」

「蜂屋と……?」

 八千代さんはまた大きく眼を見張った。

「蜂屋と……? 洋館で……? いいえ、とんでもない……」

「八っちゃん、これは見栄や外聞をとりつくろっている場合じゃないんだよ、約束があっ

たのならあったと、ハッキリいっておくれ。おまえ昨夜洋館の一室で、蜂屋とあう約束を

していたのじゃないのかい」

 八千代さんはさぐるように直記の顔を見ながら、

「だから、ハッキリいってるじゃないの。蜂屋とあう約束をしていたなんて、そんなこと

絶対にないわ。だけど、蜂屋がどうかしたの。はなれの洋館で何かあったの」

「蜂屋が殺されているんだ。はなれの洋館の一室で……」

「そして犯人は、蜂屋の首を持っていったんですよ」

 ショックもあまり大きいと、かえってなんの反応も示さないものだ。八千代さんはしば

らくバカみたいに、ポカンと口をひらいて私たちの顔を見ていたが、急に二、三歩よろめ

くと、ドシンと音を立てて椅い子すのなかに腰をおとした。

「蜂屋が殺されたんですって?」

 私たちは無言のままうなずいた。

「そして、犯人が首を持っていったんですって?」

 私たちはまたうなずいた。

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