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第二章 大惨劇--お喜多婆ア(1)
日期:2023-12-20 13:08  点击:304

お喜多婆ア

 もよりの交番からお巡りさんが駆けつけて来たのは、それから間もなくのことだった。

しかし、なにぶんにも交通不便な土地がらだけに、警視庁や検事局から、係官の顔がそ

ろったのは、それからだいぶおくれて、そろそろ日も暮れかけようとするころだった。

 警察官のほかに、新聞記者もおおぜい押しかけて来て、古神家の邸内は、にわかに人の

出入りで騒々しくなった。

 私たちはむろん、ひとりひとり係官のまえに呼び出されて、厳重な取り調べをうけた。

私はむろん、知っている限りのことを申し立てたが、このような変へん挺てこな事件を、

常識的な警察の人々に、納得のいくように、説明することはむずかしい。

 この事件を正確につたえるためには、古神家にわだかまる、あの異様な雰囲気からして

理解してもらう必要があるのだが、それがなかなか、一朝一夕に説明しにくいところであ

る。

 捜査課長の沢田警視──この人が事件を担当することになるらしいのだが──も、果たし

て、多くの疑惑をわれわれに対して抱いたようだ。

「そうすると、なんですね。あなただけがこの一家に対して、第三者の立場にある。……

と、そういうわけですね」

 沢田警視という人は、上背はないが、がっちりとした体格の、髭ひげの剃そり跡あとの

おそろしく濃い人であった。しかし、警視などという人柄から連想される、こけおどしの

おっかなさなどは微み塵じんもなくて、口のききかたなどもいたってていねいな人物だっ

た。

「ええ、まあ、そういえばそうです。仙石直記とは学校以来の識しり合いですが、ほかの

人たちは、昨日会ったのがはじめてなんです。もっとも蜂屋はべつですが」

「蜂屋氏とは御懇意でしたか」

「べつに懇意というわけでもありません。作家と画家として識り合っているという程度で

すね。会合などでときどき会いますから、あえばまあ口を利きくというくらいの間柄なん

です」

「なるほど、そうすると蜂屋氏に対してもあなたは第三者の立場にいるということが出来

るわけですが、それでどうでしょう。あなたの眼から見た犯人は……やっぱり姿をくらま

した守もり衛えという人物でしょうか」

「さあ。……」

「守衛という人は昨日の昼間、蜂屋氏と大おお喧げん嘩かをしたそうですね。それに八千

代さんを中に、猛烈な鞘さや当あてを演じていたというじゃありませんか」

「そんなこと、誰がいったんですか」

「仙石直記さんですよ。いや、そのまえに召使いからきいていたんで、直記氏に事実かど

うかただしてみたというわけです。で、犯人は守衛氏、動機は嫉しつ妬とと、そういうこ

とになると思うんですが、どうですか、あなたのお考えでは……」

「さあ……」

 私はまた言葉をにごした。沢田警視はじっと私の顔を視み詰つめていたが、やがておだ

やかな微笑を眼のなかにたたえると、

「ああ、あなたはこの説に反対なんですね。いえ、いえ、おかくしになってもいけませ

ん。ちゃんとお顔に現われている。ねえ、屋代さん、あなたはあなたで、何かお考えがあ

るのでしょう。もし、それならば、ひとつ腹蔵なく打ちあけてくれませんか」

 私はしばらく黙っていたが、やがて、思いきってつぎのようなことをいった。

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